活動レポート

αリポ酸の基礎知識
—がん治療に有効であると期待されている

αリポ酸はアンチエイジングのエースとしてよく知られ、使われています。なぜがんにこれが使われるのか、詳しいことは3人のドクターに語っていただくとして、まずαリポ酸の基本的なことをお話しします。

αリポ酸の働きとその特徴

1.年齢とともに体内生産が減っていく

44図01.jpgαリポ酸の化学式αリポ酸は1951年に生化学者レスター・リード博士が肝臓から分離し(90㎏の肝臓からごくわずか分離)、脂肪に溶けるので、リポ酸(lipoic acid)と命名されました。他の化学者が、2個(チオ:thio)の硫黄原子と8個(オクト:oct)の炭素原子からできているので、チオクト酸(thioctic acid)と名付けるべきと主張したので、今もチオクト酸とも呼ばれています。酸化体のβリポ酸と区別するため、αリポ酸と呼ばれるようになりました。
このαリポ酸は、年齢とともに体内生産が減っていきます。

2.ミトコンドリアに存在

人体はαリポ酸をつくっていて、エネルギーを生産しています。多数の動物や植物に存在します。酵母、ホウレンソウ、ブロッコリー、ジャガイモなどに豊富に含まれています。一時はビタミンの一種と考えられていたこともあります。体内でどのようにつくられるのかはまだ十分わかっていませんが、ミトコンドリアの中でつくられます。
αリポ酸は、ミトコンドリア内でATPというエネルギーをつくるのに寄与します。αリポ酸は、細胞レベルでエネルギーの生産を助けます。細胞の主要なエネルギーをつくり出す過程で、補酵素(酵素の補助をする物質)として働きます。補酵素としてミトコンドリアに燃料を用意して、細胞がエネルギーをつくるのを助けています。αリポ酸を多く摂れば、細胞内で燃える燃料の量を多く増やすことができます。
食事あるいはサプリメントを摂ることによって、αリポ酸の約30%が吸収・利用されると報告されています。

3.強力な抗酸化作用

αリポ酸は、脂溶性でも水溶性でもあるので、体内のどんな臓器内でも、どんな細胞内でも、細胞外でも抗酸化作用を発揮できます。重要なのは、この抗酸化作用のため、ビタミンCやE、CoQ10、グルタチオンなどのような重要な抗酸化物を体内でリサイクルします。
ちなみに、ビタミンCは水溶性、ビタミンEは脂溶性です。このため、血液脳関門も容易に通過し、脳内で働くことができます。

4.還元型リポ酸:ジヒドロリポ酸

αリポ酸の還元型がジヒドロリポ酸で、αリポ酸が働くとできます。ジヒドロリポ酸はαリポ酸よりもより強い抗酸化性を示します。このため糖尿病性神経障害に、より効果があることが知られています。また、この抗酸化作用が肝臓の保護作用を示すという研究もあります。

5.医薬品として長く使用

わが国では、αリポ酸は医療用医薬品として認可され、1966年から販売開始、1967年に薬科治載となっています。医薬品には、経口投与されるチオクト酸アミドと注射用のチオクト酸があります。効能効果としては、
①チオクト酸の需要が増大した際の補給(激しい肉体労働時)
②亜急性壊死性脳脊髄炎(Leigh症候群)
③中毒性(ストレプトマイシン、カナマイシンによる)および騒音性(職業性)の内耳性難聴
とされています。
αリポ酸はドイツでは、糖尿病神経障害と肝臓病の薬として認定されています。わが国では、法が変わって2004年からサプリメントとして使用可能になりました。

6.抗酸化物の再利用に働く

αリポ酸は、ビタミンCやE、グルタチオンなど他の抗酸化物質を体内で再利用できるので、超高濃度ビタミンC点滴療法時は、常時サプリメントとして内服することが勧められています。

7.糖尿病に効果的か

2型糖尿病を対象にした複数の臨床試験によれば、経口あるいは静脈注射されたαリポ酸が、血糖降下作用やインスリン感受性を改善するという報告が出ています。今後の研究が期待されます。

8.糖尿病性神経障害に有効

糖尿病にはいい治療法がありませんが、αリポ酸は効果があるとされています。多数の臨床試験がなされていて、αリポ酸の静脈注射によって、糖尿病性の末梢神経障害による下肢の疼痛、灼熱痛、知覚障害、しびれ感などの症状が改善することが認められています。

9.放射線障害予防

放射線は体内に活性酸素を増やし、これが害を起こします。αリポ酸は活性酸素を消去するように働きますので、放射線障害を予防することができます。チェルノブイリ原子力発電所の事故では、地域の子供たちにαリポ酸を28日間与えて害を未然に防ぎました。活性酸素の遺伝子傷害を予防する働きがあります。

10.キレート作用

αリポ酸は重金属をキレートすることがわかっています。キレートは、カニの爪を意味するギリシャ語のchelaに由来します。キレート剤は、重金属を包み込んで、体外に除去します。αリポ酸は鉛、水銀、ヒ素、カドミウムなどに対してキレート作用があることが実験で示されています。

11.糖代謝亢進・脂肪細胞縮小

多数の動物実験ではαリポ酸が体重減少に効果的であることが示されていますが、人間のデータは乏しいので、さらなる検証が必要です。

12.アンチエイジングの可能性

LDLの酸化を防ぎ、動脈硬化の進展を遅くし、免疫力を上げ、脳のエイジングを遅くすることなどが期待されています。
皮膚のコラーゲンの酸化を防ぐので、老化によるシワを予防します。

13.インスリン自己免疫症候群に要注意

インスリン自体に自己抗体ができ、これがインスリンと結合し、体内でインスリンとして働くために、低血糖発作を起こしてしまう状態です。αリポ酸を摂ることで発作が起こる人が、日本人には数%見つかります(検査で)ので、服用時また注射時には注意する必要があります。
なお、これ以外の重篤な副作用はほとんど報告されていません。

14.αリポ酸そのものでもがんに効果的?

αリポ酸臨床研究の第一人者バークソン医師は、αリポ酸を300~600㎎点滴することで、がんに有効であると発表しています。αリポ酸点滴と超高濃度ビタミンC点滴療法との組み合わせが、特にオーストラリアで行われています。今後、期待できると考えています。

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水上先生1.psdαリポ酸の基礎知識

(2012年2月44号掲載)

水上 治 

健康増進クリニック院長
東京女子医科大学非常勤講師