シリーズ 医療の現場から
 
医療法人健若会 赤坂AAクリニック  森 吉臣 理事長に訊く
 
 

がん発生の大きな要因は老化です。自然免疫力を高め、発生要因を取り除く予防治療が大切です
-がんを含めた多くの病気は老化が要因ですので、この老化を食い止めることで病気にならないようにします

 東京・赤坂は有名な繁華街ですが、江戸時代には徳川御三家の1つ紀州家をはじめとする大名屋敷が建ち並び、明治時代に入ると東京15区の1つとして青山地区まで含んだ「赤坂区」となり、都内で有数の高級住宅街になりました。
 戦後は、高級料亭やキャバレー、ナイトクラブなどが華やかな夜を彩っていましたが、バブルの終焉とともにほとんどが姿を消しました。しかし、その跡地には新たに近代的な高層ビルが建設され、1994年にはTBSテレビの新社屋ビッグハットも完成し、新たな賑わいを生んでいます。
 今回ご紹介する「医療法人健若会 赤坂AAクリニック」は、ビッグハットを間近に望む場所にあり、地下鉄・赤坂駅の地上出口前という好アクセスの地にあります。クリニックは、ビルの3階から7階までのフロアごとに予防から治療まで目的別に診療を行っていて、海外の最新医療も取り入れた患者さん本位の医療を展開されています。
 そこで、今回は、赤坂AAクリニックの森吉臣理事長に、統合医療全般についてお話しをお訊きしました。

がんになってからでは遅いので予防医学を広める必要性を痛感

——まず、先生のご経歴と、医師になられたきっかけをお話しください。
 私の父も医師で当初は病理医でしたが、その父が終戦後、当時の厚生省に勤務した後に横須賀の追浜で内科医として開業しました。そのような環境でしたので、なんとなく父の跡を継がなければと思い、日本大学医学部に進学したことが医師になったきっかけです。
 大学卒業後は、日大の大学院に進み1972年に修了しました。その後、一般病院の勤務を経て1980年にアメリカ・カリフォルニア大学医学部付属病院研究室に2年間留学し、帰国後は日大の附属板橋病院の病理科に勤務しました。
 私は、医学生時代は脳外科医になりたいとの希望を抱いていたのですが、病理医からスタートしていた父の「基礎研究が大事だ」との助言から病理医となりました。すると、病気の本質を追求する病理学が楽しくなってしまいそのまま研究を続けることにしました。
 病理では腎臓病を中心に研究していましたが、多くの腎臓疾患が慢性化する原因を調べているうちに、活性酸素が大きな要因であることがわかりました。
 日常業務としては、外科病理での組織診、細胞診を35年間で直接と間接を含めると約15万件の診断を行いましたが、年々がん症例が増えていくのを目の当たりにし、何とかしなければと思いながら診断していました。また、病理解剖も1000体以上行いましたが、やはりがん患者さんの解剖が多かったのです。
 このようなことが重なったことから医療の現状に問題意識を抱き、がんになってからでは遅いので予防医学を広める必要性を痛感するようになりました。そこで、当時の日本ではまだ一般的ではなかった抗老化医学(アンチエイジング)を取り入れて開業しようと思い、2005年に赤坂AAクリニックを開業しました。もちろん、AAはアンチエイジングの略です。
 がんの予防のためには、がん化の原因となる要因の有無を検査し、その危険性を取り除き減弱した自己治癒力を回復させる治療が必要になりますが、これらを私は予防治療と称しています。個人的に生活習慣に気を付けるだけではがん予防はできません。医療としての検査を含めた予防治療が必要なことを強調したいですね。
——現状に問題意識を持たれ、予防医学に目を向けられたことはすばらしいと思います。アンチエイジングはどのようにして学ばれたのですか。
 カリフォルニア大学での留学経験がありましたので、そのときの人脈を頼って半年間渡米してあちこちの医学セミナーやスクールを受講して、最先端のアンチエイジングを学びました。
 アンチエイジングは抗老化ということですが、がんを含めた多くの病気は老化が大きな要因ですので、この老化を食い止めることで病気にならないようにすることが、すなわち予防医学ということです。
——アンチエイジングというと美容を連想する方も多いと思われますが。
 アンチエイジング医療は保険診療が認められていないので自由診療ということになりますが、日本がアンチエイジングを導入した時期は自由診療のほとんどが美容であったことから、そのようなことになったのだと思います。
 保険診療に予防医療が抜けている状態では、これからの高齢化社会を見据えると再検討するべきではないかと思います。病気になってからの治療費と、病気にならないための費用とどちらが安いかといえば病気にならないほうだからです。

高濃度ビタミンC点滴療法が、がん治療に進むきっかけに

——今まで多くの先生方より、「アンチエイジングは究極のがん予防であり治療である」とお聞きしていますが、がん治療の難しさを考えれば予防医学の発展が望まれます。そして、アンチエイジングを活かしたがんの治療法は体に優しい治療法が多いのでこちらも広まって欲しいと願っています。
 今までお話ししてきたように、老化はあらゆる病気の最大の要因ですから、病気にならないためのアンチエイジングを開業して提供していました。
 当初はホルモン療法が主でしたが、他に何か良い方法はないかと国内外の情報を集めていたところ、点滴療法研究会のセミナーで高濃度ビタミンC点滴療法があることを知りました。そして、この療法を学んでいくうちにがんにも効果があることを知り、病理医のときに問題意識を持つきっかけとなった、がん治療に進んでいくようになりました。
——高濃度ビタミンC点滴療法がアンチエイジングという大枠の中で、がん治療にも取り組まれるきっかけとなられたわけですね。
 では、先生のがん治療についてお伺いします。まずは、高濃度ビタミンC点滴療法からお願いします。
 高濃度ビタミンC点滴療法は、がんリスクを低下させ治療にも効果が期待できます。そして、免疫機能を高めますので、他の治療法との相乗効果も生まれます。投与量は50〜75gで最適な血中濃度を目指しますが、この療法はがん治療につきものの副作用がほとんど見られません。
 ここで大事なことは、繰り返し体内に大量に入れるビタミンCの品質管理です。国産のビタミンC製剤は大量に使用することを想定していないので、1アンプル2gで品質維持のための防腐剤が添加されています。2gで使用するのであれば防腐剤を考慮しなくてもよいかもしれませんが、50〜75gを1度に使用するとなると防腐剤が使用されている製剤は問題があり、防腐剤が使用されていない海外産の製剤で、輸入に際しては工場から厳重な保冷コンテナで空輸したものを使う必要があります。

がんが正常細胞より熱に弱いという特性を利用した療法

——先生がボードメンバーをお務めの点滴療法研究会に所属されている医師であれば、使用製剤の心配はないと思いますが、受診の際は注意しておきたいですね。
 その他の治療法についてもお話しください。
 免疫細胞療法も取り入れています。樹状細胞ワクチン療法やNK細胞活性化療法などです。これらの療法は、患者さんから採血し培養施設で数週間かけて免疫細胞を増やすとともに活性化させ体内に戻す療法です。この療法も副作用がないのは長所ですが、オーダーメイド治療ですので費用が高いのが短所です。
 他には、抗酸化やミトコンドリア活性に効果のあるオゾン療法やアルファ・リポ酸点滴療法、少量の抗がん剤で効果の期待できるインスリン強化(IPT)療法、先端治療であるがん遺伝子療法も取り入れていますが、今までお話しした治療は、すべて自由診療になります。
 保険診療では温熱療法があります。ハイパーサーミアとも呼ばれ、がんが正常細胞より熱に弱いという特性を利用し、高周波エネルギーをがん組織に非侵襲的に加える療法です。この療法も副作用が少なく効果が期待できますが、保険診療においては治療期間や回数などに制約がありますので、がんの状態によっては十分な治療が望めない場合があります。
——保険診療が認められていることは患者さんにとって嬉しいことですが、最大の治療効果が得られるように保険点数制度が改善されることを国には求めたいですね。
 ところで、先生は一般社団法人日本オゾン・水素療法協会を主宰されていますが、水素療法についてもお話しいただけますか。
 多くの病気や老化の原因である活性酸素は、呼吸した酸素の約3%は活性酸素に変化するとともに、ストレスや過激な運動、飲酒や喫煙でも体内で発生します。この活性酸素が細胞のがん化を導いたり血管を劣化させたりします。
 私は以前から、この活性酸素をどうやって効果的に除去するかを模索していましたが、水素が活性酸素を強力に消去する作用があり、それも一番悪い活性酸素ヒドロキシラジカルを除去するので治療に取り入れました。
 また、抗酸化作用とともにミトコンドリア活性効果もありますので、がんに効果があるのはもちろん、現在ではさまざまな治療にも利用されるようになっています。
 この治療法にはナノバブル技術を応用した点滴や注射による方法、水の比率で水素と酸素を混合させたHHOガスを吸入する方法、サプリメントや水素水として経口摂取による方法があります。

患者さんが何を望まれているかよく話し合いながら治療法を選んでいる

——さまざまな治療法についてお話しいただきましたが、がん治療の選択肢が多いことは選択の幅が広がって良いことだと思いますが、患者さんが迷われるということはありませんか。
 患者さんが何を一番望まれているかよく話し合いながら、ご希望を取り入れて治療法を選んでいます。そして、2〜3カ月ごとに治療効果をチェックして効果があれば継続し、なければ他の治療に切り替えることをお勧めしています。
——最後に、がん患者さんにメッセージをお願いします。
 統合医療に携わっている医師は、「もう治療法はありません」と言われた患者さんに対しても「ここで諦めないで何か他にできる治療法がある筈だ」と日々考えながら世界の医学会から情報を集めて研究し、現状で最善と思われる治療を実践しています。
 がん治療に関して標準治療とともに何らかの統合医療を併用することが有効ですし、それが世界の趨勢です。
 現在はインターネットが発達していますので、ご自身も調査されてご自分に合った治療法と信頼できる医師を選ばれると良いと思います。
 

●医療法人社団健若会
 赤坂AAクリニック
〒1070052 港区赤坂31310 新赤坂ビル3〜7F
TEL:0120(122)247
http://www.tougouiryo.com

 

赤坂AAクリニックは新赤坂ビルの3〜7階にある


明るい総合受付


クリニック内にあるセミナールーム


点滴は赤坂の街を見ながらゆったり受けられる


吸引式水素療法


水素療法に使用する器具


高濃度酸素療法カプセル


がんが熱に弱い点を利用したハイパーサーミアシステム

森 吉臣(もり・よしおみ)
医学博士。1968年 日本大学医学部卒業、1972年 日本大学大学院医学研究科修了。1975年 追浜中央病院内科・皮膚科勤務。1980年 米国カリフォルニア大学医学部付属病院研究室勤務。1982年 日本大学医学部附属板橋病院病理科勤務。1984年 獨協医科大学教授に就任。1998年 獨協医科大学越谷病院副院長に就任。2005年 赤坂AAクリニックを開院。2012年 医療法人社団健若会理事長就任。2013年 赤坂腫瘍内科クリニック開院・総院長就任。2015年東久邇宮文化褒賞受賞。
獨協医科大学名誉教授。日本臨床抗老化医学会認定医。キレーション療法認定医。国際個別化医療学会理事。高濃度ビタミンC点滴療法専門医。点滴療法研究会ボードメンバー。一般社団法人日本オゾン・水素療法協会会長