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第31回

旬・地場の食材が養生につながる

ウオーキングは融通性に長けた健康法

すべての動物は、齢を重ねるごとに免疫力が低下し、病に罹患する可能性が高くなっていきます。たとえば古くなった自動車が故障しやすくなるのと同じで、人間も病気に罹りやすくなってしまうのです。そんな病気の代表格が、がんであると考えられます。
もちろん人間も動く動物ですから、体を錆びつかせないために適度な運動が不可欠です。健康志向が強いアメリカ人のなかには、ホテルに宿泊しても早朝のジョギングを欠かさない人もいるようです。しかし、同様のケースで日本人が走っている光景はずっと少ないようです。こうした健康への意識の強さからでしょうか、わずかではありますが、年々、アメリカではがんの発症率が下がってきているそうです。
ジョギングとは言わないまでも「適度な運動」として、私はウオーキングを勧めています。もちろん、水泳やテニスといったスポーツもいいのですが、ウオーキングは、歩行距離を「今日、多過ぎた」と思えば翌日少なくすればいいし、「今日、少な過ぎた」と思えば翌日多くすればいいといった具合に自分で調整できるからです。こうした融通性は長く続けていく健康法として優れていると思います。
自らがんと闘いながら、がんに関する著作を遺したノンフィクション作家の柳原和子さんが、がん患者さんの仲間たちを見て「がん患者で生き残っていく人は『歩く人』だということを発見した」と話してくれたことがありました。それを聞いた私は、思わず納得してしまいました。
では、どのようなタイミングで歩けばいいのでしょうか? 私は、とくに意識して歩くことはしないのですが、食後にじっとしていることがなく、すぐ仕事に移行します。病院内では移動が多く、これがばかにならない歩数なのです。それに、江戸時代の儒学者であり『養生訓』の著者である貝原益軒も「食後すぐ歩け」と記しているほどです。

体内に気を巡らせてこそ、食は生きる

いくら食後に歩くのがよいからといって、現代の生活サイクルのなかでは、それができない状態の人も少なくないと思います。そこで、食後のマッサージ法を紹介します。
もう他界されてしまいましたが、私の太極拳の師である楊名時先生は、「さん」付けで胃や腸を呼んでいました。「胃さん・腸さん、今日もありがとう」と、その働きをねぎらうように、お腹をさすっていたのです。それは、楊先生独自のマッサージであるのと同時に呼吸法でもあったのでしょう。先生は、胃や腸をなでる際、手を下に動かすときに息を吐き、上に動かすときに息を吸っていました。
私が講師を務める養生塾でも、生命場の秩序を整える呼吸法として、みぞおちとお腹をさする「三心併站功」という呼吸法を行っています。その最後の動作は次のようなものです。

1.臍の前で両手を重ねる(男性は右手を上に、女性は左手を上にする)。
2.時計回りに9回、お腹の中で気を回すイメージで重ねた両手を回します。
3.2の反対回りも9回行う。

食後すぐに歩くことができない環境にある人は、この1~3の動作を食後に行うのもいいと思います。こうした腹部をさすることは、手の平から出る気によって、腹部の中の気の巡りも良くします。ですから、この呼吸法は、消化をよくするというより、体内に宇宙のエネルギーを取り入れ、その隅々にまで気を巡らせる意味があります。体内に気を行き渡らせてこそ、食は生きるのです。

「野菜中心の食事」が養生には丁度いい

「食」とは、大地の気をいただくことです。大地が野菜や果物、木の実などの形として、私たちに気をもたらしてくれているからです。その気を多く含んでいる食物は、旬のもの、生活している地場のものです。つまり、地上に出てきたばかりのものこそ、ふんだんに気を含んでいて、この原則が古くからの食養生に生かされているのです。
最近は食材に旬がなくなってきています。スーパーなどには1年中、同じような野菜や魚が並び、昔のように旬の野菜ならではの味わいや香りを感じることが少なくなってきたのは寂しい限りです。
たとえば、暑い夏の日、帰宅すると、台所の土間にバケツが置いてあり、その中に張ってある冷たい井戸水にトマトや西瓜が浮いていて、それを頬張ると冷たくて美味しく、子どもながらに大自然の恵みに対する感謝の気持ちを持ったものです。
春は寒い冬の間に土の中でじっと我慢していた植物たちが芽を出す季節です。ふきのとう・せり・たけのこ・ふき・ぜんまい・うど・わらび……といったアクの強いものが多いのですが、春キャベツ・新玉ねぎなど、初々しい野菜も出回ります。夏は汗をかく暑い季節ですから、先述のトマト・西瓜の他に、キュウリなどの水分の多い野菜、その他、そら豆・枝豆・新じゃがいも・ナス・シソなどが美味しい時期です。
秋は夏の暑さで疲れた体から疲労を除去し、元気を得られるような栄養価の高い食物が採れる季節です。米・麦・粟・サツマイモ・キノコ類などがその代表でしょう。冬は、鍋料理に欠かせないネギ・白菜・春菊・水菜などの野菜が登場します。
こうした四季折々の旬の食材をいただくことは、健康維持のうえでも大切なことでした。それを実践していた昔の人々は、とくに栄養学の知識を持ち合わせていたわけではないでしょう。それでも、「季節ごとに採れる食材を口にする自然の摂理に則した生き方」が養生につながることを知恵として持っていたのでしょう。
また、私たち人間は、快適で便利な生活を手に入れるため、地球の環境を破壊してきました。大自然の場は、すなわち地球の場で、私たち1人ひとりの生命場と直結しています。地球の場のポテンシャル(潜在能力)の低下は、私たち1人ひとりの生命場のポテンシャルの低下を意味しています。ですから、私たちは、快適さ・便利さを手に入れた代わりに、自分の生命場も破壊してしまったのです。
大地のポテンシャルをそのまま取り入れるということでは、当然、農薬はいいものではありません。大地の純粋性に余計なものを付け加え、土地を汚すことになるわけですから……。
やはり、大地のポテンシャルを多分に含んでいて、それを食すことで自分のポテンシャルを高めることができる食物こそ、養生のうえで優れた食材と言えるのではないでしょうか。
その点、植物性の食材のほうが動物性のそれよりも大地の場をそのまま受け取っているので、ポテンシャルが高いはずです。というと、厳格な菜食主義に走る人もいますが、食事が偏り過ぎると栄養のバランスを崩し、自然治癒力の低下につながってしまいます。それに、食事が一種の苦行になっては、本来の健康的な食事から乖離してしまいます。ですから「野菜中心の食事に留意する」というくらいが、人間の体には丁度いいのかもしれません。

(構成 関 朝之)

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