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第32回

ゆったりとした長い呼吸が「生命場」を高める

未だ掴めない「気」の正体

中国はもちろん、欧米でも、そして日本でも「気」を研究している人はたくさんいるのですが、未だにその正体は掴めないままです。けれども、「気」に付随した物理的な性質はある程度、把握されてきて、掌が光や熱、遠赤外線を出すことはわかってきています。かといって、それらが「気」であるのかというと、そうではないのです。仮に遠赤外線が「気」であるならば、掌を体にかざすより、遠赤外線を出す機器を購入したほうが効率的ということになります。しかし、それでは気功になりません。このように、現在、明確になっていない「気」の正体ですが、将来は掴まえられるのではないかと期待しています。
私は、「気」はエントロピーと関係があるのではないかと考えています。エントロピーとは「無秩序化の指標」と見なされているものです。つまり、すべての物事は放っておけばおくほどに無秩序化の方向に進む、という考えです。これを「エントロピー増大の法則」と呼んでいます。この法則は、この世のすべての現象で考慮されなければならない基本法則だとされています。
私たちが生きていくために、体内ではさまざまな反応が行われています。その反応に不可欠なエネルギーは、太陽から植物の光合成を経て体内に入ってきます。そして、それぞれの反応に合ったエネルギーに変換され、その都度、エントロピーが発生します。それによって体内の秩序が乱れ、健康状態が悪化していくのです。
オーストリアの理論物理学者であったエルヴィン・シュレーディンガーは「私たちが日々を健康に過ごすことができるのは、エントロピーが熱や物にくっ付けられ、体外に排出するからである」と説いています。私は、「エントロピー増大の法則」と反対方向に物事を進める粒子かエネルギーが「気」ではないかと考えています。

体内に存在する「生命場」

中国医学の中心を担っている「気」は、生命の根源物質とされています。つまり、「気」の上に膨大な中国医学が構築されているのです。
中国医学において、「気」は私たちを取り巻く森羅万象のなかから、あるいは宇宙から体内に入ってきて、過不足のない一定量で円滑に巡っていると言われています。この状態を「健康」と称し、過不足が生じたり、流れが滞ったりする状態を「病気」と呼んでいるのです。
私たちの体内の臓器と臓器の間には隙間がたくさんあります。この隙間には肉眼では見ることができない電磁波をはじめとするさまざまな「場」が存在します。そこに中医学でいう「気」が存在し、「気場」を形成していると考えられています。私は、これらの「場」を一まとめに「生命場」と呼んでいます。というのも、私が外科医として直腸がんの手術を手がけていたとき、小腸を脇によけてしまうと、そこには何もないことに気づきました。まさに、人体の中の〝空間〟だったのです。私は、この〝空間〟には肉眼で見えない、生命に直結するような「気」のようなものが存在し、それが「生命場」を形成していると確信したのです。
また、生命のエネルギーと捉えることができる「気」を体内に取り入れ、使用したものを体外に出し、円滑に体に巡らせることは、とても大切だと思います。そのための方法が気功やヨーガなのです。
私は、養生を大きく3つに分けています。その1つが、「内なる生命場に、食物を通して大地のエネルギーを取り込んで生命のエネルギーを高める」といった「食の養生」です。「食」も大地の「気」を体内に取り入れ、「気」を巡らせる手段の1つなのです。したがって、「食」だけを単独に考えるのではなく、気功やヨーガとの組み合わせを考えていくのも養生だと思います。毎日の食事は美味しいと思って食し、毎日の生活は楽しく過ごす。すると、心と体が喜んで「気」の巡りを促進させ、真の健康をもたらしてくれるはずです。ちなみに他の2つの養生は「調身(姿勢を整える)・調息(呼吸を整える)・調心(心を整える)の3要素が揃っている気功やヨーガなどの行法」を身に付ける「気の養生」と、「心のエネルギーを高めることで生命場に作用させ、生命力を高める」といった「心の養生」です。

ゆっくりと息を吐くと副交感神経が優位になる

私は、先述の「気」を体内に取り入れるための方法として、自分の病院内で気功をしています。気功と聞くと難しいもののように思う人も少なくないかもしれませんが、誰もがどこでもできるシンプルなものなのです。
先述のとおり、気功には、姿勢(調身)・呼吸(調息)・心(調心)の3つの基本となる要素があります。これらが整えば正しい気功を会得できると言われています。正しい呼吸をするためには「気」を入れやすい正しい姿勢で雑念を払うことが必要です。この〝三位一体〟の関係において、とりわけ調息を重視したものが呼吸法です。
私たちは、日常生活のなかで無意識に呼吸を繰り返しています。しかし、呼吸は読んで字のごとく、まずゆっくりと息を吐いて、それから吸うのです。こうして吐くほうにウエートを置くと、宇宙に存在する「気」を十分に取り入れることができます。ちなみに、人間は、その生涯を「オギャー‼」と息を吐きながら始め、亡くなるときに「息を引き取りました」と息を吸って終焉させます。
また、呼吸をするとき、ゆっくりと息を吐くように心がけると副交感神経が優位に、吸うときに交感神経が働くと言われています。私の四半世紀に及ぶ医療気功の経験からも、この論は十分なエビデンスが兼ね備えられたものとして捉えています。
副交感神経が優位になれば、血液中のリンパ球が増加し、免疫力が高まるという研究も発表されています。加えて、丹田(臍の少し下、下腹の内部にある気力が集まる所)を意識し、生命のエネルギーや人間の霊性を高める丹田呼吸法も注目されています。このようなことからも、私は、ゆったりとした長い呼吸が「生命場」を高めると確信しているのです。
吐く息で内なる「生命場」のエネルギーを命の〝故郷〟である虚空に伝え、吸う息で虚空のエネルギーをもらう気功や呼吸法を行う場合、まず部屋を暗くし、自由な姿勢で座り、目をつむります。そして、イメージのなかで体内の〝空間〟を描きます。その中に生命のエネルギーがあると信じ、それを吐く息とともに虚空に伝え、吸う息で虚空のエネルギーをこちらにもらうようにするのです。私はこの呼吸法を20年ほど続けています。この呼吸法を行うときは、自分の「気」が徐々に上がってくるようにイメージします。
気功にはたくさんの種類があります。その効力の優劣はほとんどありません。ですから、自分に合った気功法を、たとえば1日30分でも生活のなかに取り入れ、続けることが大切です。
年輩の方でも入りやすい気功としては、放松功や外丹功などがあります。昨今は、カルチャーセンターなどでも気功教室が開かれています。ただし、先生と生徒との間には相性がありますので、信頼できる師を見つけて指導を受けたいものです。

(構成 関 朝之)

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