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第34回

「心のゴミ掃除」によって
「命の輝き」が増してくる

心とは「脳の働き」ではなく、「意識」という言葉に置き換えてもいい

私たちの心は、いったいどこにあるのでしょうか? 近代になって、多数の科学者による研究や検査器機の発達により「心は脳の働きによってつくり出される」という一元論的な考えが普及しつつあります。もちろん、脳は心の状態をつかさどる重要な器官ですが、「心とは何なのか?」という問いの答えを明確に提示しているものはありません。そもそも、心の動きを脳の機能にすべて置き換えて説明できるはずはないのです。心には物質のレベルを超えた「命の働き」があることが明らかなのですから……。
私たちの脳は、爬虫類脳・動物脳・人間(新哺乳類)脳の3層から形成されています。爬虫類脳は、脳の最下層に位置し、呼吸や血液循環、体温調節といった生物が生きていくための基礎的役割を果たしている脳幹です。動物脳は、脳幹を覆うように存在し、本能や記憶、好き・嫌い、怒り、恐怖、記憶などの情動を担う大脳辺縁系のことです。人間脳は、動物脳の上にあり、人格や意欲、創造性に関する大脳新皮質です。この新皮質が、より良く生きようとする「人間らしさ」をつかさどっていると言われています。
このような脳の働きが心とイコールになると言い切れないのは、心の状態が脳という臓器の働きだけに限定されないことからも明らかだと思います。心の状態が健康か否かは、脳以外の臓器や組織、ホルモンバランス、ストレスなどによって左右されるからです。現に脳の働きに問題がなくても、心が病んでしまうことがあります。それは、私たちの命が外界と密接に関係しているためです。その意味において、心は「意識」という言葉に置き換えていいのかもしれません。
意識には、脳が気づいていない無意識も含まれます。脳の中では、普段、私たちが意識していることよりも多くの情報が意識下で処理されています。脳の中の140億個とも言われるニューロン(神経細胞)の活動のうち、ごく一部だけが私たちの意識に上って、残りは無意識の活動が支えているというわけです。

「心の状態」は「体の健康」と密接につながっている

私たちの意識は、海面の上に見える氷山の一角によく例えられます。海面上の氷山に該当するのが脳によって認識されている事柄、つまり意識で、海面の下に存在する巨大な氷山が無意識だというわけです。私たちの心を形成しているのは、この意識と無意識だと言えるのではないでしょうか。さらに言えば、人の心は意識より無意識の割合のほうが圧倒的に大きいので、自分の心の状態を気にかける人はほとんどいないと言えるのかもしれません。
私たちが心の健康を維持していくには、この無意識の世界に目を向ける必要があります。たとえば、ストレスを抱え込んでいたり、心理状態が良好でなかったりした場合、体調が悪化してしまう経験をした人は多いと思います。それは、健康維持や発病に関係している自律神経・免疫・ホルモンに無意識の反応が影響を与えているからです。
無意識のうちにストレスを蓄積してしまうと、不安や恐怖などの感情が起こります。そして、それが持続されると、胃腸の働きを悪化させたり、うつになったり、あるいは他人に対して攻撃的になったりすることがあるのです。
また、強いストレスが継続されると、暴飲暴食やタバコの吸い過ぎ、睡眠不足といった不摂生な生活に陥りやすくなります。その結果、肥満や高血圧などを引き起こし、大病に罹患しやすくなってしまいます。
したがって、ストレスが溜まっていることを自覚したら、上手にそれを解消させ、生活習慣を見直すことが大事です。心の状態が安定してくれば、自律神経系・免疫系・内分泌系の連携によって体のバランスが図られ、自ずと健康になっていくのです。

悪玉ストレスを回避し、脳のリセットに努める

「病は気から」という言葉は、よく使われます。昔の人は、心の状態によって体調が良くなったり、悪くなったりすることを経験的に認識していたのでしょう。また、必要のない心配をして自分で自分を苦しめる意味の「気で気を病む」という言葉もあります。
これらの言葉からも、病気というものはまさに「気を病む」というもので、不健康な心の状態が続いて起きることがわかります。
不必要な心配とは過去の失敗や将来への不安などで、意識が「今」に集中していない状態です。このような囚われの心は、仏教では「執着」と見なします。この執着が多ければ多いほど、心の柔軟性を消失してしまうのです。心の柔軟さは、何かの問題に直面しても「仕方ないか」「次回はこうしよう」といった具合に、前向きに捉えることが可能です。
けれども、不安感や恐怖感が募ったり、こうあらねばならないといった思い込みが強かったりすると、少しのストレスによって落ち込んだりイラついたりと情緒が不安定になります。そのような状態が長引くと「気を病む」という状態になるのです。けれども、心の不調は自覚しにくいので、気づいたときには重症化しているケースが少なくありません。
こうした心の病は、医学的には「精神疾患」と呼ばれています。精神疾患は、思考・感情の働き、意思の疎通、記憶、現実認識などを鈍らせます。その原因は人それぞれですが、そこには本人が処理できない過度の精神的ストレスが溜まっているのが共通した特徴です。その過度の精神的ストレスは「心のゴミ」と言い換えてもいいでしょう。たとえば、部屋の中が整理整頓されているとスムーズに日常生活を送ることが可能ですが、ゴミ屋敷のように不要なものが散乱していると見動きさえもとりにくくなってしまうのと同じです。
ただし、すべてのストレスが悪いわけではありません。ですから、自分が抱えているストレスが、やる気やいい意味での緊張感などにつながる「善玉ストレス」なのか、それとも〝ゴミ〟になる「悪玉ストレス」なのかを見極めることが大切です。そのうえで、悪玉ストレスを上手に解消してみることです。要は、心を掃除して〝ゴミ〟を排除するのです。「心のゴミ掃除」には適度な運動もいいでしょうし、本連載で幾度かご紹介している呼吸法や気功も適しているでしょう。
心のゴミ掃除は、悪玉ストレスやその前段階のストレスを直観でキャッチし、なるべく避けることが大切です。それでも起きてしまったら、そのことに心を奪われないようにして、極力、あるがままに受け流してみることです。つまり、脳のオーバーヒートを防ぐため、こまめに心をリセットするように努めるのです。
といっても、それほど難しく考える必要はありません。私の場合は、毎朝、患者さんと行う気功と、毎夕、病院の食堂でする晩酌が健康法なのです。この「朝の気功に夜の酒」によって心がリセットされ、鋭気が充電されるのです。
心のゴミとなる悪玉ストレスを適度にリセットしておけば、無意識の反応も正常に働いてくれるはずです。すると、本来、私たちに備わっている自然治癒力が通常の役割を果たし、より良く生きようとする「命の輝き」が増してくるはずです。

(構成 関 朝之)

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