おすすめスポット

第35回

西洋医学・代替療法、それぞれの得意分野でがんにアプローチ

がん治療の可能性を
広げた中国医学

私が中国医学に可能性を求めたのは、西洋医学の限界を感じたからです。多くの医師はアメリカの医学に着目していたのですが、そこには完璧な手術をしたつもりでも再発してしまうがん治療の厚い壁を打ち破る術があるとは思えなかったのです。
1980年と言えば、まだ中国は閉ざされた国で、情報が乏しい時代でした。そんな状況にあって、私は北京と上海にある7カ所の医療機関を見学する機会に恵まれました。いずれの施設でも多くのがん治療が行われていて、手術のレベルがとても高いことに驚きを覚えました。けれども、私が見たかったのは、漢方薬や鍼灸などの中国医学でした。
中国医学には、珍しい草を煎じて飲めば難病が瞬時に治ってしまう、ツボに鍼を刺すとたちまち元気になってしまう、といった神秘的なイメージが付きまとっています。当時の私も、中国医学に対し、過大な期待を持つ傾向がありました。ですから、地味な漢方薬の講義を聞いても、胸が躍ることはありませんでした。そんななか、初めて触れた気功は、私の気持ちを高揚させてくれたのです。
北京肺腫瘤防治研究所では、入院してから手術の日まで、患者さんが気功に励んでいました。担当医は「鍼麻酔が効くのは素直な人で、性格を素直にするには気功がいちばんだ」と言っていました。加えて「気功はがんの再発予防にも用いている」とも話してくれました。その話を聞いた私は、目の覚めるような感慨に囚われてしまいました。というのも、術後の再発予防こそが、がん治療には重要だと考えていたからです。
当時、日本では術後の再発予防は行われていないに等しい状態でした。経口の抗がん剤や免疫療法薬、消化薬を処方していた程度だったのです。また、退院後の食事・呼吸・運動・ストレスなどの生活指導の面でも、ほとんどの医師が無関心でした。このようなこともあり、私は気功こそが中国医学の〝エース〟だと感じ取り、書店で20冊以上の気功関連の書籍を購入して帰国しました。
気功にはおびただしい種類がありますが、調身・調息・調心といった共通点があります。言い換えれば、この3要素が揃ってさえいれば、気功と呼んで差し障りありません。
調身とは姿勢を整えることで、上半身の力が抜けて下半身の力がみなぎった「上虚下実」という状態が当てはまるでしょう。調息とは呼吸を整えることで、意識的に吐き、吸うときは自然に任せることで、体をリラックスさせて自然治癒力を高めます。調心とは心を整え、揺るぎない心を持つことです。
私のがん治療の枠は、中国医学を知ったことで大きく広がりました。手術・抗がん剤・放射線の治療の後、再発予防をせずにいるのではなく、気功や漢方などで積極的に防ぐことができるのです。それは、がん治療に限界を感じていた私には、大きな希望となったのです。

自分の病院に道場を設置

当時、私が勤務していた病院に入院している患者さんを気功に誘っても、誰も乗ってきてくれませんでした。最先端の治療を受けるために大きな病院に入院しているのですから、関心を持ってもらえないのは、ある意味で当然だったのです。そこで、病院内で中国医療を取り入れたがん治療を行うためには、自分で病院を設立するしか術はないと悟りました。そして、故郷の埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立することにしたのです。
病院を建てるにあたって、どうしても譲歩できないことが1つだけありました。それは院内に道場をつくることです。
帯津三敬病院ができて間もない頃、患者さんを気功に誘うと1度は義理で来てくれても、次に誘いに行くと病室から姿を消してしまいました。私が誘いに来る時間を見計らい、気功に誘われないよう、どこかに行ってしまっていたのです。
仕方なく、私は1人で呼吸法を行っていました。そのうちに、道場に通ってくれる仲間が現れました。それは、喘息を持った小学生の男の子でした。親御さんが呼吸法を習わせたいということで、道場に通うようになったのです。その少年とは、私が毎年、講師を務める予備校の講習会で再会しました。彼は医学部を目指していて、1度はその道に挫折したものの、再度、挑戦して念願の医学部に合格しました。その報が届いたときは、誰も来ない道場で頑張っていたご褒美をいただいたような気持ちになりました。
スタートしたばかりの帯津三敬病院で行っていた中西医結合(西洋医学に中国医学を加えた医学)は、風邪をひいて来院された患者さんに漢方薬を出す程度のものでした。やがて、遠方からのがん患者さんも来院してくれるようになりました。
私の病院では中国医学だけでなく、食事療法・心理療法・各種民間療法などの治療法も行うようになりました。というのも、医療は人間を丸ごと診るものですから、西洋医学に中国医学を加えれば万全だということはないのです。また、患者さんの人生観や死生観、地球・宇宙・死後の世界といった領域までも医療と捉えています。しかし、現代の医療がそこまで到達するにはまだまだ時間を要するでしょう。ただ、その種蒔きだけは、しっかりとしておきたいと考えています。

プラスになる治療法をデザインしていく
柔軟性が不可欠

治療段階で、手術・抗がん剤・放射線の3大療法しかないとき、がんの患者さんは主治医の言う通りに治療を受けていればいいので、迷うことはありません。しかし、それで〝いい結果〟が得られないケースが多々あることから、代替療法が注目を集めるようになりました。そして、代替療法の情報が広がり、どのような治療法を受ければいいのか迷った患者さんは主治医に相談します。しかし、大多数の医師は、代替療法に対して否定的な答えを患者さんに返してきます。
一部を除いて、西洋医学に携わる医師は代替療法に興味を示しません。ですから、どのような代替療法が存在するのかということを詳しく知らないのです。理解していないものを「いい」とは言えません。良心的な医師であれば「よくわからない」と答えるでしょうが、医師が「わからない」と答えるのは勇気を必要とする行為です。そこで「医学的に検証されていない」「論文がない」といった否定する理由を並べ、代替療法を切り捨ててしまうのです。
西洋医学はとても優秀な医学ですが、すべての病気に対応できるものではありません。どのような分野でも、得意・不得意があるのです。西洋医学は、救急医療や感染症などの得意分野で大活躍できますが、慢性疾患に対しては一時的に症状を抑えることはできても根本的な治癒をもたらすことが、どちらかというと不得意です。その部分は、中国医学やさまざまな民間療法に助けを求め、患者さんにプラスになるような治療法をデザインしていく柔軟性が不可欠です。
がんの治療法で言えば、あるところまでは3大療法で可能ですが、それ以降は代替療法でやっていくとか、西洋医学と代替療法を統合するとか、それぞれ得意な方法でがんにアプローチすることが必要になってくると思います。

(構成 関 朝之)

BACKNUMBER


帯津三敬塾クリニック

東京都豊島区西池袋1-6-1 メトロポリタンホテル地下1階
電話:03-5985-1080 FAX:03-5985-1082
ホームページ:http://www.obitsu.com/

008-009 帯津良一の「養生塾」-新病院.jpgホリスティックな医療を求めて、多くの患者さんが集まる帯津三敬病院(埼玉県川越市)


2012帯津先生.psd帯津 良
帯津三敬病院名誉院長
帯津三敬塾クリニック顧問