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第12回

幹細胞とオーソモレキュラー医学

本誌でも紹介されているように、2013年2月24日に点滴療法研究会は設立5周年を記念してスペシャルセミナーを開催しました。米国よりリオルダンクリニック所長のロン・ハニハイキ先生、ステムセル研究所のニール・リオルダン先生、カナダのマギル大学内科教授のジョン・ホッファー先生を招聘するという、これまでにない内容の濃い講演会となり、出席された先生方からも好評でした。
実は講演ではハプニングが起きました。前日に3人の先生が集まって通訳と打ち合わせをしました。そこで、初めてお互いの発表の内容を知りました。なんとリオルダン先生は他のお2人の内容を知って、自分の講演のタイトルもスライドも全部変えると言い出したのです。そして他の先生も、自分のスライドを追加すると言い出したのです。
そして、変更したスライドを持ってきたのは講演の当日の朝です。すでにスライドは日本語に翻訳して出席者に配布済みでしたので、私たちは大慌てです。しかし、結果としてこれが素晴らしい内容で、他の2人の先生の講演と有機的に結びつき、素晴らしい講演会になったのです。
今回は、このリオルダン先生の講演についてお話ししましょう。

■がんは治癒することのない傷?

2004年頃、リオルダン先生はボストンのベス・イスラエル病院の病理学教授ハロルド・ドヴォジャク博士の講演「がんは治癒することのない傷のような挙動をする」を聴講し、強烈なインパクトを受けました。ドヴォジャク博士は「腫瘍は治らない傷のようである、腫瘍は創傷治癒を阻害する」と言うのです。リオルダン先生は逆に、その傷を治す、すなわち創傷治癒を完成させればがんは成長を止める」と考え、2005年に論文にして提唱しました。

■間葉系幹細胞(MSC)の枯渇が、がんを発生させる

創傷という言葉は医学になじみのない方はけがや傷を想像します。これらは創傷の一部であり、ここでは細胞の機能破綻や炎症まで広く考えてください。この創傷治癒に間葉系幹細胞(MSC)が重要な働きをしています。MSCは全身の骨、筋肉、あらゆる血管、すべての組織に分布し、年齢と共に減少します。
創傷が起きたときに局所組織に存在するMSCが動員されて治癒を促します。しかし、局所組織にあるMSCが枯渇すると(大半の急性事象や慢性状態)、骨髄幹細胞がMSCに分化して治癒促進に動員されます。そして、骨髄からのMSCが枯渇すると、治癒することができない。ここでリオルダン先生は「がんは機能的修復細胞」ととらえ、MSCの代わりに傷を修復させるためにがんが発生すると考えたのです。
がんには修復機能があることは、これまでの多くの基礎研究からもわかっています。また、リオルダン先生は、ピロリ菌による炎症部位に発生した胃の腺がんが骨髄由来幹細胞であるとした研究を取り上げて説明していました。また、がん細胞をMSCと一緒に培養するとがん細胞にアポトーシスが誘発されます。すなわち、MSCががん細胞の修復細胞としての機能を終えさせたと考えられます。

■高濃度ビタミンC点滴療法と幹細胞

リオルダン先生は講演の中で、「高濃度ビタミンC点滴療法が有効で治療を継続していた患者さんが、急にがんが進行するケースがある。これは経過中に組織のみならず、骨髄のMSCが枯渇した結果、高濃度ビタミンC点滴療法では抑えきれなくなったと考えられます。そこで健康的なMSCを骨髄から生成させることが必要となるのです」と述べていました。この説明に聴衆はまさに目から鱗で納得しました。
リオルダン先生はMSCを銀行の口座残高に例えて解説しました。
幹細胞は、創傷を治癒させるものであり、治癒しない傷であるところのがんを治癒させることができる。この幹細胞は「口座残高」として蓄えておくことができる。しかし、炎症や大きな傷があれば、この幹細胞の「口座残高」は、使い切ってしまう可能性がある。ここで非常に興味深いことを話しました。
「栄養素のあるものは『口座残高』に高い配当率をもたらす可能性がある。たとえばビタミンCやD3は骨髄の幹細胞の生成を促進する」と言うのです。

■幹細胞の栄養学的介入

健康的な間葉系幹細胞(MSC)の補給ががんの抑制に重要となります。現在の幹細胞の研究のほとんどが、病人の体外から外来性MSCの注入に集中しています。もし、栄養学的に患者さん自身のMSCを増やすことができるならば、コストと安全性からベストの方法となるでしょう。たとえば、リオルダンクリニックの研究で血中ビタミンDの濃度と血管内皮前駆細胞とは正相関があることがわかっています。また、ビタミンC投与もMSCの増加が証明されています。
リオルダン先生は、ビタミンD3、ザクロエキス、乳酸菌細胞壁成分を組み合わせたサプリメントにより、血中の幹細胞を2倍に増やすことに成功しています。そしてがん患者さんの内因性MSCの量を保つために、治療初期からビタミンD、ビタミンC、あるいは彼の開発したサプリメント(ステムCニュートリション。日本での販売元:株式会社スピック)を摂取することが必要であると結論しました。

■おわりに 

幹細胞ががんの治療に重要な役割を演じていること、そして栄養学的介入により幹細胞を増やすことができるというのは、まさに新鮮な情報でした。栄養療法が幹細胞医学という最先端科学に関わっていたのです。リオルダン先生は講演の中で「オーソモレキュラー医学に関わっている医師は、実は最先端の幹細胞医学を実践しているのです」と述べたことが印象的でした。

参考文献
⑴Meng X, Riordan N.:Med Hypotheses 2006;66:486-90.

参考:
⑴アルジェリア・オーソモレキュラー医学会
http://www.orthomoleculaire.org/
⑵被ばく対策映画「a Gift」の予告編 http://hibakutaisaku.net/dvd/

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スピックサロン・メディカルクリニック

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1.psd柳澤 厚生(やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科講師、助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、キレーション、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法、高濃度ビタミンC点滴療法などを日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダのトロント市に本部がある国際オーソモレキュラー医学会において殿堂入り。2012年より国際オーソモレキュラー医学会の会長に就任。著書に『ビタミンCががん細胞を殺す』(角川SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川SSC)、『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)などがある。