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第13回

ビタミンCは腎臓結石を作らない!

「ビタミンCを摂りすぎると腎臓結石や尿管結石になる」という誤った情報があります。実は、この情報を信じている医師や栄養士はとても多く、これが新しい問題を引き起こしています。そう、高濃度ビタミンC点滴療法は腎臓結石を起こすのではないかという心配です。結論を先に言いましょう。ビタミンCは腎臓結石を起こすどころか、むしろリスクを減らします。

■1960年代の誤った仮説が広がる 

ビタミンCの一部は代謝されてシュウ酸になり、尿中に排泄されます。1960年代に仮説として、腎に排出されたシュウ酸はカルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石、ひいては腎臓結石を発症する可能性があるという論文が出ました。実際にビタミンCの摂取で尿中のシュウ酸(シュウ酸カルシウムではない)がわずかであるが増加することが明らかになり、仮説「ビタミンCは腎臓結石のリスクを高める」は何の疑問も持たれずに世界中に広がり、それが常識になりました。
ところが、その後に多くの臨床論文で、実際にはビタミンCを摂取しても腎臓結石は増えなかったと発表されたにも関わらず、すでに広まってしまった誤った情報をうち消すことができなかったのです。これがいまだ「ビタミンCは腎臓結石のリスクを高める」が流布され続けている理由です。

■ハーバード大学がビタミンC説を否定

1999年にハーバード大学医学部内科の研究者らは、尿管結石の既往のない8万5557人の女性を14年間観察し、尿管結石の発症とビタミンCを含む栄養素の摂取について検討しています。その結果、ビタミンCの摂取は尿管結石の発症にまったく関与せず、尿管結石の予防にビタミンCを制限することはまったく意味がないと結論しています。

■ビタミンCは尿管結石を予防する

そもそもビタミンCの代謝産物の一部であるシュウ酸が尿中に増えることがきっかけで起きた論争の過ちです。尿中のカルシウムはむしろビタミンCと結合し、シュウ酸と結合するカルシウムの量は非常に少ない。すなわち、ビタミンC自身が尿管結石の元になるシュウ酸とカルシウムの結合を阻止しているのです。
視点を変えてみましょう。シュウ酸塩は、食事に含まれる多くの食品によって発生します。主なものに、ホウレンソウ100gあたりのシュウ酸塩含有量は300~600㎎、茶とコーヒーは、多くの人の食事における最大のシュウ酸塩摂取源で、1日の最大摂取量は150~300㎎と考えられています。これは、ビタミンCを1日1000 ㎎摂った場合に発生すると推定される量よりかなり多いのです。ビタミンCを腎臓結石の悪玉栄養素とするのはこれっきりにしたいものです。

■さまざまな腎臓結石

腎臓結石には、以下の4種類がよく知られています。ビタミンCはシュウ酸結石を含むほとんどすべての結石の生成を予防します。
1、リン酸カルシウム結石:よく見られる結石ですが、ビタミンCによって酸性化された尿中で容易に溶けます。
2、シュウ酸カルシウム結石:よく見られる結石ですが、前述のようにビタミンCはシュウ酸とカルシウムの結合を抑制します。
3、リン酸アンモニウムマグネシウム結石:それほど多くは見られず、感染症の後に現れることが多い。これは、ビタミンCによって酸性化された尿中で溶けます。
4、 尿酸結石:プリン体の代謝異常によって生じる。ビタミンCは尿酸の生成を減らして、尿酸結石を予防します。

■高濃度ビタミンC点滴療法と腎臓結石

それでは高濃度ビタミンC点滴療法ではどうなのでしょう。サプリメントと違い、大量のビタミンCを直接血管に投与するので、大量のシュウ酸の生成、ひいては腎臓結石をつくってしまうのではないかと懸念します。この疑問に結論を出したのが高濃度ビタミンC点滴療法の臨床試験を指揮しているカナダのマギル大学のホッファー教授(写真)の研究グループです。ホッファー教授も高濃度ビタミンC点滴とシュウ酸のデータについてはっきりと結論を出したいと考えたのでした。彼らは100gのビタミンC点滴後6時間の尿を集めてシュウ酸を測定したところ、わずか80㎎のシュウ酸しか検出されませんでした。そこで、高濃度ビタミンC点滴療法におけるシュウ酸の排泄はわずかであり、少なくとも腎臓機能が正常である限り、尿管結石や腎臓結石は起きにくいと結論したのです。

■ビタミンCが腎臓結石の発生リスクを二倍? ―米国医師会雑誌

ところが、今年2013年2月の米国医師会雑誌にビタミンCが腎臓結石の発生リスクを2倍にするという論文が掲載されました。この研究は、スウェーデン人男性のサプリメントを摂っていない2万2448人と、ビタミンCのサプリメントを摂っている907人の2つのグループに分け11年間追跡したものでした。その結果、対照の腎臓結石の発症率が10万人あたり毎年163人に対し、ビタミンCのサプリメントを摂っているグループは310人と倍近く増えていました。
この論文に対し、オーソモレキュラー医学ニュースをはじめ、多くの反論がネット上を賑わしています。まずこの論文が、腎臓結石の種類が不明でビタミンCが関わるシュウ酸カルシウム結石であるかを確認していないなど、多くの不完全な研究方法について指摘されています。
いずれにせよ、この論文でさえ腎臓結石が613人に1人(0・16%)発症するところを、ビタミンCの摂取で1・9人(0・31%)と微々たる増加です。米国でもスーパーで販売している一般薬と比較しても著しく低いのです。それでも、この論文が発表された翌日には製薬会社系の医療情報ネットニュースは軒並みトップニュースとして配信していました。医薬品の副作用こそ大きな問題であるのに、ビタミンCの微々たる、それも証明されていない腎臓結石にフォーカスすることが不自然に思えます。

■マグネシウム欠乏と腎臓結石

マグネシウムは、腎臓結石の形成を予防する上で重要な役割を担います。たくさんあるマグネシウムの仕事の1つは、カルシウムを溶けた状態に保つことにより、結晶状に凝固するのを防ぐことです。脱水症になった場合でも、十分なマグネシウムがあれば、カルシウムは溶けたままとなります。マグネシウムは、腎臓結石のきわめて重要な治療法となります。カルシウムの溶解を助けるのに十分なマグネシウムが体内にないと、さまざまな形態の石灰化に至ることになるのです。これは、結石、筋けいれん、結合組織炎、線維筋痛、アテローム性動脈硬化(動脈の石灰化の場合)につながります。シュウ酸カルシウム結石は、マグネシウムが多く含まれている食品(ソバ、青野菜、豆類、ナッツ類)もしくはマグネシウムのサプリメントによって300~400㎎/日の十分な量のマグネシウムを摂れば、効果的に予防できます。酸化マグネシウムはわずか5%しか吸収されず、下剤としての作用もあるので勧められません。クエン酸マグネシウム(Magne-sium Citrate) が安価で吸収も良いでしょう。

■おわりに

高濃度ビタミンC点滴療法は米国、カナダ、デンマーク、日本などでさまざまながんの臨床試験が行われています。しかし、日本においては腫瘍専門医らからまだ十分に受け入れられていないのが現状です。なかには患者さんに「そんなにビタミンCを注射したり飲んだりしたら尿管結石になってひどい目に会いますよ」と言って、高濃度ビタミンC点滴療法をやめさせたケースもありました。読者諸氏はぜひ正しい知識をもち、安心してビタミンCの摂取や点滴を伝えていただきたいと思います。

参考文献
⑴ Curhan GC et al.: Intake of vitamins B6 and C and the risk of kidney stones in women. J Am Soc Nephrol. 1999;10(4):840-5
⑵ Robitaille L et al.: Oxalic acid excretion after intravenous ascorbic acid administration. Metabolism. 2009 Feb;58(2):263-9.
⑶ Thomas LD et al.: Ascorbic Acid supplements and kidney stone incidence among men: a prospective study. JAMA Intern Med. 2013 11;173(5):386-8.

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1.psd柳澤 厚生(やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科講師、助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、キレーション、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法、高濃度ビタミンC点滴療法などを日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダのトロント市に本部がある国際オーソモレキュラー医学会において殿堂入り。2012年より国際オーソモレキュラー医学会の会長に就任。著書に『ビタミンCががん細胞を殺す』(角川SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川SSC)、『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)などがある。