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第7回

糖質と健康

オーソモレキュラー栄養療法の中で糖質は重要な位置を占めています。今回は糖質の制限とがん、そして果糖と健康についてトピックスを述べたいと思います。

■糖質の制限ががん細胞のアポトーシスを誘導する

PETスキャンはがん細胞に取り込まれた放射線同位元素で標識したブドウ糖を検出してがんの位置や大きさを診断します。これはがん細胞が旺盛にブドウ糖を消費する性質を利用しています。まさに、糖質を摂るとがん細胞がそれを食べて成長してしまうので、糖質を制限しなければならないと言うのは納得できます。
それでは一歩進めて、糖質を極端に減らすことでがんを抑えることができるのでしょうか? このことについては最近、UCLAの医学は、ブドウ糖を枯渇させることでがんのアポトーシスサイクルが促進するという研究成果を発表しました。研究者ら細胞内のブドウ糖を枯渇させていくとミトコンドリアで活性酸素が生成され、チロシンキナーゼのリン酸化を阻害してがん細胞の増殖に必要なシグナル伝達を遮断し、アポトーシスを誘導する。この一連の流れが促進するというものです。
こう考えると、がん患者さんの栄養状態が良好なうちに、徹底した糖質制限を患者さんに勧めることは理にかなっています。がん患者さんに不必要な糖質を与えない、さらに糖質を制限することは、オーソモレキュラー医学の考え方に一致します。

■糖とメタボリック症候群

糖質について、ペンシルバニア大学医学部神経科学科の准教授Robert G. Smith医師が国際オーソモレキュラー医学会ニュースに「有害な砂糖」と題して寄稿しているので紹介しましょう。
有名科学誌Natureに最近掲載された記事によれば、砂糖、とくに果糖は、心疾患、がん、糖尿病、肥満、肝不全など、多くの非伝染性の重篤疾患に関与しています。果糖は、清涼飲料などの加工食品に広く含まれています。果糖およびアルコールなどの高カロリー物質は、体内組織で直接利用することができないために、肝臓で代謝されなければなりません。
米国バンダービルト大学小児科グループの研究によれば、果糖の摂りすぎは肝臓に負担をかけ、インシュリン抵抗性を高め、糖尿病に向かわせます。さらに、果糖は満腹感を感じにくくするため、カロリーが過剰摂取されます。加工食品に添加された形で果糖などの糖を摂った場合の中毒作用は、アルコールに例えられています。果糖の摂りすぎは肥満でない人でも「メタボリック症候群」になりやすく、メタボリック症候群になると、果糖によって、高血圧、循環器疾患、インスリン抵抗性、生体分子(タンパク質、脂質など)の損傷が誘発されます。
炭酸飲料や、ろ過した果汁飲料など、砂糖を主成分とする清涼飲料にはカロリーはあるが、果物を丸ごと食べれば摂取できる必須栄養素はありません。そして必須栄養素の摂取源である全粒穀物、果物、野菜を摂らなくなってしまいます。
しかし、砂糖の添加は、清涼飲料だけに限りません。高果糖コーンシロップや普通の砂糖(ブドウ糖50%+果糖50%から成る蔗糖)といった形態での果糖の添加は、多種多様な加工食品に見られます。それは朝食用シリアル、ジュース、ゼリー、ジャム、キャンディー、焼き菓子、ソース、デザートをはじめ、調理済みのおかずや加工肉にまで及んでいます。果糖は、甘い味はしますが、空腹感を満たしません。
添加果糖を多く含む加工食品には、アルコールとよく似た常習性があり、とくに幼児は常習癖がつきやすいのです。その結果、米国では子どもでも大人でも、肥満がまん延しています。
果糖によって生じたこのような食習慣は、概して悪循環をもたらし、全身の代謝障害や炎症のほか、栄養素(ビタミンや必須ミネラルなど)の欠乏症につながります。こうした砂糖依存症の悪循環は、「メタボリック症候群」と一致し、現代の食事による高死亡率に大いに関与しています。
果糖は、果物の形で摂れば、腸でゆっくり吸収されるため、また、必須栄養素も一緒に摂取されるため、有害性は低いのです。総カロリー数を減らす、食物繊維の摂取量を増やす、運動量を増やすなどの生活習慣が役立ちます。しかし、こうした健康に良い選択肢に効果があっても、現代の消費者は納得しません。こうした問題の一因は、随所で耳にする莫大なお金をつぎ込んだ清涼飲料の広告にあります。

■砂糖と果糖を減らす健康教育が必要

米国では砂糖の過剰摂取の問題を正すため、アルコールやタバコのように、砂糖を規制することも提案されています。すでに多くの学校で炭酸飲料の販売が禁止されていますが、替わりに、添加砂糖を含むジュースや人工飲料が売られています。添加果糖が健康にもたらす危害について、また、安価ですぐに利用できる健康的な代替策について、情報を広く知らしめることができれば、何百万という人の健康が改善される可能性があります。こうした情報を知っていれば、買い物客は、野菜ジュースを選んだり、コップ1杯の水を飲んだり、それと併せて栄養価の高い未加工食品や適量のビタミンサプリメントを摂るというような別の選択肢を考えるようになるでしょう。
食事に関する実用的な情報、つまり、われわれにはどんな栄養素が必要か、どのように適正量を決めるのか、加工食品を摂る食事にはどんな危険があるかという情報を提供する運動が必要なのです。方法としては、テレビを使った宣伝や健康プログラムの策定のほか、小学校レベルから医大レベルまでの教育カリキュラムなども考えられます。
オーソモレキュラー医学は、十分な用量の必須栄養素を与えて欠乏症を防ぐことにより疾患を実際に治療するもので、こうした情報の提供に役立ちます。砂糖が添加されている食品や、必須栄養素が入っていない加工食品を摂らないようにすれば、誰もがもっと健康になることができます。こうした食品を避けることができない場合は、肥満・循環器疾患・糖尿病・がんのまん延を防ぐため、必須栄養素のサプリメントで補うことも可能です。

■おわりに

国際オーソモレキュラー医学会では栄養教育に力を入れています。現代の多くの疾病が不適切な栄養バランスに起因しています。糖質の過剰な摂取も大きな問題です。国際オーソモレキュラー医学会では、2013年より日本の子どもたちのうつ病、多動症(ADHD)、自閉症にまずは投薬の前に栄養療法を行うというiMindfulキャンペーンを計画しています。

参考文献
1. Graham N.A.,. et al.:(2012)Molecular Systems Biology 8:589.
2. 国際オーソモレキュラー医学会ニュース 
http://www.iv-therapy.jp/omns/news/15.html
3. Lustig R.H., et al. :(2012) Nature 482:27-29.
4. Bremer A.A., et al.:(2012)Pediatrics. 129:557-570

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スピックサロン・メディカルクリニック

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1.psd柳澤 厚生(やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科講師、助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、キレーション、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法、高濃度ビタミンC点滴療法などを日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダのトロント市に本部がある国際オーソモレキュラー医学会において殿堂入り。2012年より国際オーソモレキュラー医学会の会長に就任。著書に『ビタミンCががん細胞を殺す』(角川SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川SSC)、『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)などがある。