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第8回

マルチビタミンサプリメントは
がんリスクを減らす

この数年間はビタミンやマルチビタミンのサプリメントに対するネガティブな医学論文が注目され、有効であるというポジティブな論文は日の目を見ない傾向がある。第4回で書いた「マルチビタミン論争」のように、わずかなリスクをセンセーショナルに扱い、一方で大きな恩恵についてはあえて書かないという手法である。同様に昨年11月、クリーブランドクリニックの泌尿器科のグループは、3万5533人の男性を調査し、健康な男性はビタミンEの摂取で前立腺がんの罹患リスクが0・24%増加すると発表し、ニュースウィークスをはじめとする有名雑誌に取り上げられた。
しかし、論文を取り寄せて熟読すると、ビタミンE摂取で総死亡率を0・2%、心臓発作を0・3%、重症心臓病発作を0・7%減少させたと書かれている。ところが抄録だけ読む限り、ビタミンEの重要な有益性については一切書かれていない。メディアの取り扱いもビタミンEのポジティブな効果を取り上げず、フェアとは言えない。
そのような風潮の中で、「マルチミネラルの摂取ががんのリスクを減らす」という重要な論文が発表された。このようなポジティブな論文こそメディアは情報発信するべきであるが、現実はほとんど取り上げることはない。そこでぜひ読者には詳細を知っていただきたいと思う。

■マルチビタミンはがんリスクを減らす(ハーバード大学)

この論文はハーバード大学医学部のグループにより、米国医師会雑誌に発表された。50歳以上の男性医師1万4641人にマルチビタミンもしくはプラセボを約11年間投与した。その結果、マルチビタミンを摂取した群は有意にがん罹患率が減少したのである。がんの既往のあるグループも、マルチビタミンの摂取でがん罹患率は減少している。米国人男性に多い前立腺がんと大腸がんの罹患率は差がなく、総罹患率で減少していた。
さて、この論文におけるマルチビタミン摂取によるがんリスクの減少は8%である。年間がん死亡者数が35万人に迫る日本なら、単純計算で2万8000人のがん死亡を減らすことができる。
実は、健康な食事、禁煙、肥満の改善、さらに妥当な量のサプリメントの摂取により、さまざまな生活習慣病を予防することは経験的にも知られていたことである。オーソモレキュラー医学を知る人なら、何を今更というところであろう。ところが、この研究が他と違うところは、対象となったのが医師であったところである。米国医師には喫煙者が少なく、ヘルシーなライフスタイルを好み、もともとがんリスクは低いと考えられる対象者である。そのような医師が、マルチビタミンを摂取することでがんリスクが減っているのである。これの意味するところは大きい。

■マルチビタミンの摂取量について

実際、米国においてマルチビタミンは人気のサプリメントであり、男性の48%、女性の56%、そして医師の72%が摂取している。しかし、これまでの20年間に多くのマルチビタミンの臨床試験でポジティブな結果が少なかった。これについてペンシルバニア大学医学部神経科学科の准教授Robert G. Smith博士は摂取量があまりに少ないか、組み合わせが不適切なために相乗作用が生まれなかったのではないかと言っている。たとえば、ビタミンCとビタミンEが相乗的に抗酸化作用を発揮することはよく知られている。
Smith博士は1日摂取量について、ビタミンB₁、B₂、B₅、B₆を50〜100㎎、ビタミンB₃を200~1000㎎、ビタミンCを3〜6g、ビタミンDを1500〜2000単位、ビタミンEを400〜1200単位、マグネシウムを200〜500㎎を推奨している。

■オーソモレキュラー医学を実践する医師の言葉

オーソモレキュラー医学では「体の中に自然に存在する物質(ビタミン、ミネラル、アミノ酸など)を分子レベルで最適な量を投与して病気の予防と治療をする」のである。マルチビタミンはオーソモレキュラー医学で多用する。そこで、オーソモレキュラー療法のリーダー達が「ビタミン」について述べている言葉を紹介しよう。皆、点滴療法研究会のボードメンバーであり、私の友人である。

〈マイケル・ジャンスン医師〉(米国)
高用量のビタミンE(800 IU)は、健康な高齢者の免疫力を高める。また、ビタミンCの用量を、国の推奨量の100㎎よりはるかに多くして2000㎎を摂ると、アレルギー性の鼻炎と喘息が有意に減少する。三叉神経痛の治療にビタミンB₁(チアミン)が使用され成功を収めていたことが、ずっと前の1940年にアメリカ医学会誌に発表された論文に記載されていた。栄養療法および栄養素療法は、他のほとんどの医療より安全で安価で効果的であるという、常識になりつつある事実を受け入れようとしていない医師が多い。マスコミのほとんどの記者は、栄養に関する最新の文献も、古い文献も、ちょっと前の文献も知らない、ということは明らかである。こうした文献を知らないのなら、記事を書くべきではない。

〈トーマス・レヴィ医師〉(米国)
現代医学には、現代の政治よりも多くの策略が見られる。ビタミン剤など抗酸化作用があるサプリメントの科学的データを自分の目と頭に受け入れることを医師が拒み続けているかぎり、今日の平均的な医師は、今日の平均的な政治家よりも低い信頼しか得られない。

〈ガート・シュートメーカー博士〉(オランダ)
オランダ保健審議会の報告書によれば、公式の食事指針に従って食事をしている人は人口の2%に満たない。また、たとえそうした食事指針に従って食事をしていても、ビタミンA、ビタミンD、葉酸、鉄、セレンおよび亜鉛は十分に摂られていない、と同審議会は述べている。オランダの病院での調査によると、患者の40%は、入院の時点で栄養不良の状態にあった。したがって、サプリメントは必要である。多くの慢性疾患のもとは代謝障害と栄養不足にあるので、最善の治療法は、栄養状態を良くすることであり、これにはサプリメントの使用が含まれる。ビタミン・ミネラル剤の「危険」は、疑われている有毒作用にあるのではなく、慢性的な欠乏にある。私は30年間毎日、科学文献に従っているが、サプリメントによる悪影響はこれまで見たことがない。

■おわりに

私が10年前に大学生を調査したところ、多くの学生が亜鉛やビタミンの不足が見られた。今はもっと酷い状態だろう。私たち日本の医師らは慢性疾患を見たときに、まずは栄養状態を診断し、投薬の前に適切なビタミン・ミネラルの投与を開始するべきである。オーソモレキュラー医学の基本は「薬を投与する前に栄養状態を適切に改善する」ことである。

参考文献
1. Klein EA, et al. JAMA:2011;306:1549-56.
2.Gaziano JM et al. JAMA: 2012;308:E1-10.
3. 国際オーソモレキュラー医学会ニュース 
http://www.iv-therapy.jp/omns/news/index.html

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スピックサロン・メディカルクリニック

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1.psd柳澤 厚生(やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科講師、助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、キレーション、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法、高濃度ビタミンC点滴療法などを日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダのトロント市に本部がある国際オーソモレキュラー医学会において殿堂入り。2012年より国際オーソモレキュラー医学会の会長に就任。著書に『ビタミンCががん細胞を殺す』(角川SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川SSC)、『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)などがある。