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第9回

心臓病に対するキレーション療法の
有用性が認められる

2012年11月3日よりサンフランシスコで開かれていた米国心臓学会において、心臓病にキレーション療法が有用であると発表されました。数十年にわたって標準治療の医師との間で論争の的になり、米国心臓学会でも公式に否定されていたキレーション療法に一つの決着が見られたわけです。

■キレーション療法とは

キレーション療法は米国で年間30万人以上の心臓病患者が受けている治療法です。キレーション療法は合成アミノ酸であるEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を点滴静注する治療法で、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、重金属解毒、加齢による視力低下、糖尿病性血管障害などが適応となります。EDTAにはNa–EDTAとCa–EDTAがあり、前者が動脈硬化や鉛中毒の治療、後者が重金属中毒やデトックスの治療に用いられます。本稿ではNa–EDTAによるキレーション療法について取り上げていきます。
元々、キレーション療法は1950年代に当時多かった鉛中毒の治療法として始まりましたが、鉛中毒の狭心症患者の症状が劇的に改善したことから心臓病の治療法として注目を浴びるようになりました。1960年代に狭心症、閉塞性動脈硬化症に有用であるという臨床論文が次々に発表されました。ところが、1969年にEDTAの製造パテントが切れ、1970年代にキレーション療法は不遇の道を歩みます。多くの有効性を示す論文がありながら、米国食品医薬品局(FDA)や医師会が正規の治療として認めず、時には裁判を起こしてキレーション療法を提供する医師の州医師免許の剥奪まで行われたのでした。
オーソモレキュラー医学を提唱したライナス・ポーリング博士は「キレーション療法は合成アミノ酸を用いているが、分子レベルで病気を治療するという私が提唱しているオーソモレキュラー医学の概念に一致する」と評価しています。

■米国先端医療会議(ACAM)がプロトコルを提唱

1980年代にACAMはキレーション療法の標準プロトコルを提唱し、認定医講習と認定医試験制度を導入、より安全かつ効果的な治療として普及していきました。しかし、標準治療の医師や学会はキレーション療法にずっと否定的で歩み寄りはありませんでした。
大きな転機は2002年に開始された臨床試験です。キレーション療法の真偽に決着を付けようと、米国立衛生研究所補完代替医療部門と ACAMが共同でキレーション療法多施設臨床試験(TACT Study)を実施しました。この臨床試験は5年で終了する予定でしたが、キレーション療法を否定する民間団体から非倫理的な治療だから中止せよと裁判を起こされ、一時中断を余儀なくされました。そして2011年に臨床試験が終了し結果の発表が待たれていました。

■キレーション療法は心臓病の再発作に有用である

2012年11月に開催された米国心臓学会において、コロンビア大学心臓部門のゲルバシオ・ラマス部長よりキレーション療法臨床試験の結果が発表されました。134施設が参加し、虚血性心臓病発作の既往のある患者1708人を無作為に2群に分け、 治療群にはキレーション療法を40回、対照群には生理食塩水の点滴を40回実施しました。
結果は驚くべきものでした。まず、重症の心筋梗塞再発作などの心血管事象がキレーション群26・5%と対照群 30% に比べて減少していました。特に糖尿病患者では新たな心血管事象が34%も減少していたのです。いずれも統計学的に有意な結果でした。
記者会見でラマス部長は「糖尿病患者の心血管事象がこれだけ減少することは予想していなかった。今後も新たに臨床試験が必要である」と述べています。残念ながら、これだけ明らかな結果でありながら、米国心臓学会はすぐにプレスリリースを出し、
「非常に興味深い結果であるが、まだ多くの疑問がある。FDAはNa–EDTAを心臓病の治療への適応を認めていない。臨床適応には慎重であるべきだ」
とコメントしています。
私は今回の臨床試験結果により、キレーション療法の〝エビデンスが確立した〟と思っています。米国においてだけでなく、日本でもますますキレーション療法は広がっていくものと期待しています。

■日本におけるキレーション療法

点滴療法研究会では日本におけるキレーション療法の普及のために、医師向けの講習と認定医試験を行っています。この講習プログラムは元ACAM会長で認定医講習と試験委員を担当したマイケル・ジャンスン医師を招き、日本で初めてACAMプロトコルによるキレーション療法を安全かつ効果的に実施できるように指導しています。ACAMでは3年前から従来よりも厳しい認定医試験制度に移行しました。現在、新制度での日本人認定医は点滴療法研究会ボードメンバーである澤登雅一医師(三番町ごきげんクリニック)と私の2人だけです。認定医講習ではNa–EDTAによるキレーション療法を澤登医師、Ca–EDTAによるキレーション療法は同じくボードメンバーの上符正志医師(銀座上符クリニック)が担当します。
キレーション療法を学びたいとお考えの医師は2013年3月に開催する認定医講習を受けられて、認定医の取得を目指していただきたい。
キレーション療法を受けたいという患者さんには、点滴療法研究会のホームページから、お住まいの近くでキレーション療法を提供する会員の医療機関を紹介しています。

■おわりに

キレーション療法はオーソモレキュラー医学の1つであり、安価で安全な心臓血管病の治療法です。キレーション療法に使われるアミノ酸のNa–EDTAはすでに製造パテントが切れているために大手の製薬会社では見向きもしません。むしろ、キレーション療法が普及すると自分たちの利益に影響すると考え、FDAに圧力をかけてキレーション療法の普及を妨げています。あるインターネットの製薬業界寄りのニュースでは、「この研究で患者のQOL(生活の質)は従来治療と変わらなかった」とだけ述べ、大事な心血管事象の減少には触れようともしていませんでした。
実は医療費の高いバイパス手術や血管拡張術による10年生存率は、これらの治療を受けない薬物療法のみの場合と変わらないという論文が発表されています。そういう意味ではキレーション療法は患者さんにとって朗報であり、医薬品業界にとっては脅威となっています。
私たち点滴療法研究会では、日本におけるキレーション療法の普及を目指しています。

参考文献
1、マイケル・ジャンスン、柳澤厚生著『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)

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スピックサロン・メディカルクリニック

神奈川県鎌倉市小町2-12-30 BMビル3F
電話:0467-22-3000 
ホームページ:http://www.spicclinic.com/

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1.psd柳澤 厚生(やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、 杏林大学医学部内科講師、助教授、杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。また、神奈川県鎌倉市にスピックサロン・メディカルクリニックを開設、キレーション、マイヤーズ・カクテル、グルタチオン療法、高濃度ビタミンC点滴療法などを日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員(FACC)。2009年第10回国際統合医学会会頭。2011年にカナダのトロント市に本部がある国際オーソモレキュラー医学会において殿堂入り。2012年より国際オーソモレキュラー医学会の会長に就任。著書に『ビタミンCががん細胞を殺す』(角川SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川SSC)、『医師と患者のためのキレーション療法』(点滴療法研究会)などがある。