活動レポート

免疫療法―森吉臣医師に訊く
〜免疫療法とは何か、どんながんに効果があるのか〜

今回、本誌では免疫療法を特集します。免疫療法は3大療法である手術・放射線・抗がん剤に続く第4の治療法とも言われていますので、患者さんの期待も大きいと思います。
しかし、その内容については「よくわからない」という方や、いろいろな種類の中からどの免疫療法を選んだらよいか迷われている方も多いと思います。 
そこで、日々がん治療に携わっておられる赤坂腫瘍内科クリニックの森吉臣総院長に、免疫療法の基礎的なことから同療法の種類、それぞれの特徴などについてお訊きしたいと思います。

「免疫」とは何か
「免疫療法」とは何か

――まず、基礎的なことからお聞きしますが、免疫とはなんですか。
 免疫とは、人間を細菌やウイルスなどの外敵・異物から守るものです。ウイルスなどの外敵が体の中へ侵入してきたときや、がん細胞が生まれたときに、それを攻撃し自身を守るシステムです。
――よく「免疫力が落ちていたので、風邪をひいた」などと言いますが、それは風邪のウイルスが侵入してきた際、ウイルスに免疫が負けて風邪をひいたということなのですね。
 その通りです。そして、そのうちに風邪はほとんど治ると思いますが、それは免疫が力を盛り返して風邪のウイルスを排除したということです。
――たしか血液は、酸素を運ぶ役割が赤血球で、免疫を担うのが白血球、ケガをした際に血液を凝固させ出血を防ぐのが血小板だったと覚えていますが。
 血液をおおまかに分類すれば、その通りです。
ただし、白血球には1種類の細胞ではなく、さまざまな役割を持った多種類の細胞があります。それらが相互に連絡をとりあい、協力して外敵と闘っているのです。
――私たちの体を守ってくれる素晴らしい免疫ですが、どうしてがんになったり、がんが治らなかったりするのでしょうか。
 それは、生活習慣や加齢、ストレスなどにより、免疫力が落ちてしまったからです。また、がん細胞は元々自身の細胞なので、異物と認識しにくいということもあります。
――3大療法の場合は切り取ったり、叩いたりして治療しますが、免疫療法はどうするのですか。
 免疫療法には、サプリメントで免疫を活性化させる能動免疫療法と、次のような方法で行う、受動免疫療法と呼ばれているものがあります。
受動免疫療法とは、基本的に患者さんの血液を採取し、血中から免疫を担当する細胞を取り出し、短期間で人工的に培養して増やしたり、活性化(元気に)させたりして体内に戻し、強化された免疫によってがんと闘うものです。

がんの免疫療法それぞれの特徴

――一言でいえば人工的に免疫力を高めてがんと闘う免疫療法ですが、免疫療法にもいろいろな種類があると聞きます(を参照)。患者さんはどれを選んだらよいか迷うと思いますが、それぞれの特徴を教えてください。
 私のクリニックでも、主なもので5種類の免疫療法を取り扱っています。しかし、経緯や病状によってその患者さんにとってベターなものがありますので、それを選択するのがよいでしょう。

表 各種免疫療法
自家がんワクチン 再発予防
T細胞 がん予防、アンチエイジング、がん治療で免疫低下
NK(BAK) がん治療、再発予防
5種複合
ANK がん治療
血液クレンジング 全てに併用

 


――具体的にそれぞれの療法について教えてください。
がんワクチン図.jpg図 自家がんワクチン療法の流れ まず、自家がんワクチン療法があります(を参照)。手術で切除したがん組織を特殊加工して無毒化し、がん抗原といわれる免疫細胞が異物と認識する目印を免疫細胞に覚え込ませて、がん細胞だけを選択して攻撃する療法です。
抗がん剤などで免疫力が落ちていなくて、免疫機能がしっかりとしている方の再発予防には効果的です。ただし、切除した1センチ角の大きさのがん組織がないと受けられません。がんが早期で見つかって切除した腫瘍が小さかった場合や、病理検査などでがん細胞を使ってしまってあまり残っていない場合、また、執刀医の理解が得られず細胞を持ち出せない場合などは、他の療法になります。
――がん細胞が手に入ったら受けられるのが、自家がんワクチンですね。
 次に、Tリンパ球療法があります。これは、患者さんの血液(約30㎖)から、リンパ球を分離して約1000倍に活性化増殖させてから点滴で体内に戻す療法で、免疫療法の中では歴史があります。この療法は、がん予防目的や治療時の負担が少ないので、3大療法で免疫力が低下した方にお勧めしています。
――がんを攻撃するリンパ球を増やし、治療時の負担が少ないのがこの療法の特徴ですね。
 NK細胞療法ですが、NKというのはナチュラル・キラーという意味です。リンパ球の場合は樹状細胞という司令塔から、異物であるとの指令を受けなければ攻撃しませんが、NK細胞はそういった指令なしに素早く攻撃します。このNK細胞を取り出し、活性化し数も増やして体内に戻す療法がNK細胞療法です。現在がんがある場合は、こちらの療法を勧めます。
――指令を受けずに攻撃するNK細胞を増やし、がんを叩く療法ですね。
 5種複合免疫療法は、先ほど免疫細胞にはいろいろな種類があると言いましたが、そのなかからキラーT細胞・NK細胞・NKT細胞・γδT細胞・樹状細胞という5種の免疫細胞を培養し、体内に戻す療法です。免疫をバランスよく増やしがんを攻撃します。
――5種の免疫をバランスよく増やすところが特徴ですね。
 ANK細胞療法は、採血中にNK細胞だけを取り出し、それ以外は再度体内に戻しながら採血します。ですから、採血に5時間くらいかかります。強力な療法ですが、週に2回の頻度で行いますので、体力があまり衰えていない方にお勧めしています。また、費用は投与回数も多いので他の療法のおよそ倍になります。
――ANK細胞療法は採血に時間がかかり、治療頻度が週2回と負担が大きいようですが、効果は期待できそうですね。

費用は1クール約200万円 副作用がなく入院の必要もない

――今、費用のお話がありましたが、免疫療法の費用はいくらかかりますか。保険は適用されるのですか。
 保険は適用されませんので、すべて自費診療となります。金額は多少の差はありますが、ANK細胞療法を除いて1クール200万円くらいですね。ただし、税務上の医療費控除は受けられます。
――免疫療法治療にはほとんど副作用がないと言われていますが、なぜ副作用がないと考えられるのでしょうか。また、治療の際に入院の必要はありますか。
 培養した免疫細胞は、がん細胞と正常細胞を区別し正常細胞は攻撃しませんので、ほとんど副作用の心配はありません。ANK療法は、治療の際に発熱を伴いますが、それくらいです。入院の必要もありません。
――発熱は好転反応ということでしょうか。まあ、発熱くらいでしたら、我慢できそうですね。入院しなくても治療を受けられ有難いですが、問題は費用ですね。がん保険の診断一時金などを利用できれば、何とかなりそうですが。

副作用や侵襲性を考えたら、理想的ながん治療である

――ところで、免疫療法はどんながんにも効果があるのですか。
 どんながんでも有効ですが、肝炎やエイズなどの感染症があると免疫療法は受けられません。培養装置がウイルスで汚染し、他の患者さんに感染するのを防ぐためです。
――免疫療法は、抗がん剤と併用できるのでしょうか。
 むしろ併用治療で効果が上がります。採血や免疫細胞の投与のタイミングは、併用治療の内容によって調整していきます。
――がんは強敵です。免疫療法を受けているとき、標準治療のほかにも他の療法も取り入れたほうがよいのではないですか。
 体内に入れた免疫細胞ですから、体内環境を整えてできるだけ長く効果的に働いてもらう必要があります。そのためには、血液クレンジング療法(オゾン療法)や、温熱療法を併用するのが良いです。
――免疫療法について詳しくお話しくださり、ありがとうございました。この療法がさらに進化し、がん治療から苦痛がなくなる日が一日も早く来ることを願っています。
 私たちは素晴らしい免疫システムを持っています。しかし、現代社会は、ストレス・各種汚染・運動不足など免疫を下げる方向へ向かっています。この素晴らしいシステムを普段から安易に低下させてはいけません。
免疫療法は、3大療法と比べて副作用や侵襲性を考えたら、理想的ながん治療だと思います。免疫療法は日々進化していますので、そう遠くない日にこれだけでがんを治療できる日が来るのではないでしょうか。そのときには、もっと費用も安価になって、保険も適用されるようになっていることでしょう。

BACKNUMBER

森先生カラー.jpg免疫療法ー森吉臣医師に訊く 〜免疫療法とは何か、どんながんに効果があるのか〜

(2015年1月79号掲載)

森 吉臣

赤坂腫瘍内科クリニック総院長