今中健二(中医師)

神戸市生まれ。2005年中医師を目指して、中国贛南医学院中医科を卒業。江西省新余市第四人民医院で臨床を重ね中医師となる。現在、中国医学Labo同仁広大院長として、医学生や医療関係者に中医学の指導、教育活動に従事。同時に多くのがん患者の相談を受け、患者さん個々の体質に応じた適切なアドバイスは「とにかく分かりやすい」と高い評価を得ている。中医学が「日本のがん治療のもう1つの選択肢」となる医療にすべく、ラジオや出版・メディアの分野でも活動を広げている。

今中健二中医師に訊く
「がん治療と漢方」

日本では珍しい中医学の専門医師、今中健二先生に、陰陽理論で展開する中医学の理論によるがんのメカニズムと治療の方法について聞きました。同時に、中医学のがん治療理論に基づいて研究された抗がん漢方薬の天仙液について検証していきます。なお、天仙液は漢方によるがん治療の第一人者として知られる王振国医師(現・振国中西医結合腫瘍病院院長)が30年前に研究開発して世界的に流通しており、今中先生も注目されている抗がん漢方薬です。

漢方医学によるがん治療の理論と方法

がんは陽タイプか陰タイプに偏った病気

現存する世界最古の医学書と呼ばれ、中医学の理論の元として有名な『黄帝内経』の中にはがんについての記載が残されています。中医学では、古い時代からがんという病気は決して怖いものではありませんでした。

ここからは少々、専門的になりますが、陰陽五行説は中医学の基礎であり、体質を陰か陽で見ます。そして、がんは陰か陽のどちらかに偏ってしまった病気とされており、熱(陽)タイプと水(陰)タイプに分かれます。

[陽タイプのがん]

主に脾と胃に湿熱がこもった状態から発症する「陽タイプ」に区分されるがんは、食べ過ぎ状態といえるでしょう。カロリーの多いものばかりを食べていれば熱が生じ、脈拍も体温も上がります。

高血圧の状態でテンションが高く、すぐに興奮します。胃に湿熱がこもると血液の水分が蒸発して乾燥し、毛細血管が固まり、そこに血栓のような塊ができます。それが岩のようになったものが、がんなのです。

そして経絡を伝って熱が登っていき、がんが転移・再発します。たとえば胃の経絡でいうと、胃から鼻、こめかみと経由するので口内炎、顎関節症、喉の腫れ、頭痛などを生じます。それが胸に降りてきて、胃から股関節、膝に巡ります。

この巡りが、乳のところで固まったものが乳がんになるというのが漢方理論です。ですから胃の治療をしないで、乳がんだけの治療をしても根本が治っていないので転移・再発の原因となるのです。

私が今、注目している抗がん漢方薬の天仙液は、病は胃からという中医学理論に則って、胃から起こる余分な熱の発生を調整してくれる、理にかなった漢方薬と言えます。これにより、原因の体質と結果である腫瘍の治療が可能になります。

抗がん剤の副作用を抑える働きのある抗がん漢方薬の天仙液

経絡理論は中医学独自の考え方で、西洋医学にはありません。そのため西洋医学では、乳がんを原発とし、胃に転移したとみなされますが、本来ならば原因は胃なのです。そこで熱タイプのがんの治療に効果的なのが、断食療法です。

肉食を止め、がんの餌としての糖質を止める考えは理にかなっています。断食したら熱が生めなくなります。胃が悪いのに、体力をつけようとがんばって食べるから悪化するわけです。若い方は食べるものが多く、エネルギーがあります。そこでがんの転移が早くなります。年を重ねるにつれて胃があまり機能しなくなるので、がんの成長も転移も遅くなるわけです。

このような陽タイプのがんには抗がん剤が有効です。私は抗がん剤も放射線も否定はしません。というのも中医学の治療を併用すれば副作用を抑えることができるからです。

抗がん漢方薬の天仙液には、免疫力を高めることで副作用を抑える働きがあります。副作用が軽減されれば、抗がん剤や放射線を効果的に使うことも可能でしょう。抗がん剤の副作用のひとつに嘔吐などがありますが、胃の働きを止めてしまうので陽のタイプの方にはより一層の効果があります。

[陰タイプのがん]

一方、陰のタイプは体内に水分が多くなった状態です。水分が多いと血液が薄められます。血管の中も水でふやけ、肝臓の周辺がふやけて脂肪肝になり、心臓も肺も肥大します。

心臓の弁が動きにくくなり、肺の中に水がたまることもあります。建物で例えると床下浸水で柱が腐っている状態で、体内では子宮、卵巣、前立腺、大腸といった内臓が腐っている状態です。それが悪性腫瘍になります。

体内の水分について中医学では長い間注目されてきましたが、西洋医学の血液検査やレントゲン検査、MRIなどでは水の数値は出ないので、この水が多いタイプについてはメカニズムが解明されません。

また水が多い陰タイプのがんは固まらないために抗がん剤が効きにくいのです。熱性は急性な場合が多いですが、このタイプは進行が遅く、どちらかといえば副作用的なもので病気が進行しがちです。

天仙液は代謝を促進し、胃を回復させる

このタイプのがんの場合は発汗することが大切です。漢方を使うか、有酸素運動を行います。またラジウム鉱石などホルミシス効果があるものを利用するのもよいでしょう。水分がなくなると濃度が濃くなるので一時的に腫瘍マーカーが高くなることもありますが、水分がなくなれば抗がん剤の効果が見込めます。

漢方では、天仙液は水を排泄できますので使うと効果的です。10数年前に私が中国の病院で研究をしていたとき、天仙液のことをよく耳にしました。当時から世界的に知られている抗がん漢方薬という印象がありました。水分を排出して、胃と脾臓を強くする効果が見込めるからでしょう。

身体のなかに血行不良が起きて元気と血が足りないときに、天仙液を摂ることにより、代謝がよくなり、元気を失った胃が回復するのではないかと思います。抗がん剤治療中に飲んでもいいし、抗がん剤が終わってから飲んでもよく、副作用も消えてきます。

日本人の2人に1人ががんになるという今、がんは脳卒中や心臓病とともに3大生活習慣病のひとつとされています。となれば〈アポトーシス〉誘導こそがん医療の理想なのかもしれません。

がん治療は中西医結合の統合医療の時代

漢方はその人の症別に合った適切な治療ができるというメリットのほかに、疼痛治療ができることが注目されます。不通即痛といって、体内の気や血の流れが滞ると、そこに痛みを生じます。

もちろんがん細胞があれば血行不良のために痛いこともあります。西洋医学では、がんの痛みの原因がわからないので、一律にモルヒネを使いがちですが、私はモルヒネをあまり使わずに、体質や希望に合った疼痛治療を提唱します。

中医学は、2000年からの長い実績があり、今も昔と同じものを使っています。西洋医学はたかだか100年くらいですから、経験値がまったく異なります。

とはいえ、私は西洋医学を否定しているわけではありません。これからの医療は中西医結合し、それぞれの得意分野で役割分担をしていけばよいと思います。抗がん剤治療をする際にも、中医学で患者さんの身体のタイプを知り、最も適した方法で抗がん剤や放射線療法を行えば患者さんの負担も少なくなるでしょう。

根源的なところは中医学が受け持ち、技術的なものは西洋医学に任せる、また中医学では、今の状態を見て、衣食住のアドバイスをする。環境医療をしてあげることによって、生活習慣を改善するように指導していくのがよいでしょう。

今の日本に欲しいのは、環境医学と、中医学的に患者さんの体質を診断できる人です。どんなによい薬でも、間違った診断では、せっかくの効果が出ないどころか、反対の結果を生んでしまうことすらあります。

また治療も薬だけに頼るのではなく、その患者さんの状況に応じてオーダーメイドの治療法を提案していくことが大切ではないでしょうか。