オゾン療法 (血液クレンジング療法)

がん治療の補完療法としてのオゾン療法
——抗がん効果とQOL(生活の質)向上

森 吉臣 医療法人社団健若会 赤坂AAクリニック 院長
一般社団法人日本オゾン水素療法協会 会長

 はじめに

オゾン療法の国内での普及率は、未だ少ないとはいえ全国で250以上の医療施設で日々の診療メニューに取り入れられています。オゾン療法で使用しているオゾンガスが強力な酸化力のある気体のために、オゾン療法を危険視する医療関係者もいますが、他の医療と同様に正しい手技で行えばまったく危険性はありません。安全と言われているビタミン注射よりもさらに副作用のリスクは低いことが証明されており、安全性の高い治療法とされています。また、血液オゾン療法は、50年以上の長い歴史のなかで、医学的な有効性について多くの論文が発表されています。

オゾン療法の種類

オゾン療法には、表1のように投与方法がいくつかあり、その目的も異なります。このなかで、血液オゾン療法が最も一般的な方法ですが、2、3、4、の方法についても技術を習得しておくと便利です。特に4の整形オゾンはがん患者さんだけでなく、多くの高齢者が抱えている悩みの解消に役立ちます。

表1 オゾン療法によるがん補完療法

オゾン療法 作用 抗がん効果 QOL向上効果
 1)血液オゾン療法(血液クレンジング、大量自家血オゾン浄化法) ①ミトコンドリア活性化 アポトーシス誘導 倦怠感改善、活動の向上
②酸素解離曲線右方移動 がん治療耐性化蛋白の減少 倦怠感改善、代謝亢進
③免疫強化 がんの縮小 治癒力強化、感染減少
④抗酸化力強化 転移抑制 副作用軽減、抗老化
⑤遺伝子異常発現軽減 がん抑制、再発予防  
⑥抗炎症効果 がん抑制 治癒力向上、動脈硬化抑制
2)オゾンワクチン(少量自家血オゾン浄化法) ⑦抗ウイルス作用 抗ウイルス性肝炎  
⑧抗腫瘍作用 がんの抑制  
3)腸内オゾン療法(直腸注入療法) 上記⑥までの作用 抗がん効果 上記⑥までのQOL効果
⑨腸内の抗炎症効果 抗腸内炎症疾患  
⑩肝内の抗ウイルス効果 抗ウイルス性肝炎  
4)整形オゾン療法(局所注入法) ⑪局所組織の抗炎症作用 局所の抗炎症と鎮痛 疼痛解消
⑫局所細胞のミトコンドリア活性 局所の組織修復再生  
⑬局所の循環と低酸素改善 局所の組織修復再生  

1.血液オゾン療法
最も広く行われている治療法は血液オゾン療法であり、その効果は、①血液循環の改善、②抗酸化力の強化、③免疫強化、④酸素利用率改善、⑤ミトコンドリア活性化によるATPの増産、⑥幹細胞稼動化など多様で、人が生きるために必要な基本的な土台部分をしっかりサポートしてくれる治療です。自然治癒力が強化されることになります。それ故に臨床応用の範囲が広く、がん予防や治療、糖尿病の治療や合併症予防、他の多くの疾患予防や治療、そして健康増進、抗老化などにも適用されています。
がん治療の補完療法としては、細胞のミトコンドリアに作用して酸素利用率を上げて活性化する効果が注目されています。これはオゾン療法が、ミトコンドリア内でNADHをNADへの変換を促進して低下した比率を正常化することで、酸素利用率を改善する作用があり、がん細胞の低下しているミトコンドリア機能を活性化することで、がん細胞にアポトーシスを誘導します。この活性化はミトコンドリア機能検査で測定できます( 図1)。
上記の血液オゾン療法の効果6項目はすべてが、抗がん効果の補完療法として作用しています。さらに抗がん剤の副作用の軽減、新たながん発症の抑制、そして日々の生活のQOL(生活の質)向上などに役立っています。
 
2.オゾンワクチン
オゾン療法には他の方法として、約5㎖の少量の血液に濃度の濃いオゾンガスを注射筒内で強く気泡ができるほど混和したものを皮下注〜筋注する方法があり、これにより、オゾンワクチンが作製され、ヘルペスウイルス、メガロウイルス、HIV、HCVなどの慢性ウイルス性感染疾患や各種のがんなどに効果があります。
 
3.腸内オゾン療法
これは、肛門から直腸内にオゾンガスを注入する方法で手技は比較的容易ですが、オゾンガスの濃度と注入量には注意を払う必要があります。この療法の適応は、大腸がんや肝臓がん、そして結腸、直腸の急性〜慢性炎症疾患、肝臓のウイルス性疾患、腸内細菌調整などが治療対象となります。腸内に注入されたオゾンガスや反応物は、すぐに腸内細菌や腸管壁組織の生体分子と反応し、その後、腸管の血管に入り肝臓を経て全身を巡ることとなります。注入されたオゾンガスの反応によって生じた活性酸素や過酸化脂質代謝産物は、血液オゾン療法と同じ反応ですので血液オゾン療法と類似の効果も得られます。
 
4.整形オゾン療法
その他に、オゾンガスを直接患部の皮下や軟部組織に注射する整形オゾン療法で、数回の治療で痛みから解放されることが多いです。実は、この方法はヨーロッパなどでは、かなり一般的なオゾン療法であり、専門クリニックも存在します。
がん患者さんでは、高齢者が多いためか、整形外科領域の痛みを訴えることがあり、意外に治療対象者は多いようです。  
整形オゾン療法は、 表2のようにほとんどの整形領域疾患に対して効果があり、それは対症療法というより根本から治すことから症状改善に持続性があるのが特徴です。当院でも整形外科領域の疾患で慢性化して、薬物療法でもなかなか改善しない症例に対して、積極的に整形オゾン療法を提供しています。

表2 整形オゾンの対象疾患

①椎間板ヘルニアなどの腰痛
②頸腕症候群
③変形性関節症
④筋膜炎
⑤五十肩
⑥肩こり
⑦手根管症候群
⑧腱鞘炎
⑨打撲
⑩骨折
⑪その他

整形オゾンがなぜ効くのか?

慢性の疼痛を伴う整形領域の疾患で、オゾンガスによる局所治療によって完治する場合も多く、患者さんの満足度の高い治療法となっています。
治療によって軟部組織や関節腔などに注入したオゾンガスは、組織液や関節液に溶解します。その際にオゾンは多価不飽和脂肪酸やタンパク質などと速やかに反応し、活性酸素種と過酸化脂質代謝物を発生します。これらの反応物質の作用は下記のように炎症を抑制します。
①IL-1可溶性受容体の放出の増加などによりIL-1、IL-8、IL-12、IL-15、TNFなどの炎症促進性サイトカインを抑制する。
②TGF-β、IL-10 などの免疫抑制系のサイトカインを放出して、炎症を抑制する。
このように、整形オゾン療法では注入したオゾンガスは、血液オゾン療法と同じような反応を局所で起こして炎症を抑え、疼痛も軽減し、活性酸素を減らすこととなります。同時に、血行の改善をもたらし局所に酸素と栄養を豊富にし、傷んだ軟部組織の再生修復作用が始まります。すなわち、整形オゾン療法には、鎮痛作用、抗炎症作用、再生修復作用が期待できます。
実際の治療頻度は腰痛や関節痛、肩こりなどが多いです。

腰痛(椎間板ヘルニア)

血液オゾン療法だけの治療で血流改善によって腰痛が消失することが多いです。血液オゾン療法で改善しない例には整形オゾン療法を試みています。イタリアの文献で椎間板ヘルニアに対して、オゾンガスで椎間板の髄核を融解する治療が行われています。この整形オゾン治療による化学的髄核融解術での成功率は約70%で、ヘルニアが消失する例が約30%以上、減少した例が約40%との報告があります。しかし疼痛の原因は、ヘルニアによる圧迫というより、そのために生じた炎症が原因になっていることが多いため、必ずしも化学的髄核融解術で治療せずに、疼痛を発している傍脊髄筋にオゾンガスを注入して炎症を抑えるだけでも十分な治療効果が得られます。この方法は整形外科医でなくても治療が可能です。
 
実際の方法
濃度10〜15μのオゾンガスを20㎖の注射器に準備して腰痛の強い部分の傍脊髄筋中に、オゾンガスを約3〜5㎖注入する。通常4〜8カ所に注入する。
オゾンガスは、基本的に注入後に痛みを感じるので、オゾンガス注入前には、2倍に希釈したキシロカイン約0・5㎖を局所注入する場合もある。

変形性膝関節症

オゾンガスを膝関節腔に入れてオゾンガスの持つ抗炎症作用、抗鎮痛作用、そして再生修復作用を利用する治療です。変形性膝関節症では半月板の軟骨が変性破壊されて表面が絨毛上に毛羽立った状態となり、大腿骨との摩擦で炎症や痛みを生じています。この軟骨を少しでも再生させて表面を平滑にすると同時に、炎症や痛みも軽減されます(図2)。
膝関節症の程度にもよりますが、今までの経験で多くの症例で著明な効果が得られています。1回の治療でも効果を実感されることが多く、その鎮痛効果は2〜4カ月持続します。最近は、ここにPRP療法を組み合わせて行う再生医療によって、きわめて良好な相乗効果が得られます。
 
実際の方法
オゾンガス10〜15μを10㎖の注射器に準備する。まずオゾンガス注入前に2倍希釈した5%キシロカイン約5mlを関節腔注入する。注射針はそのままにして、注射器をオゾンガス入りの注射器と交換する。そして10㎖のオゾンガスを注入する。その後に非架橋ヒアルロン酸を2㎖注入する。

オゾン療法以外のがん治療補完療法

高濃度ビタミンC点滴、高濃度α-リポ酸点滴、漢方薬、その他多種の補完療法がありますが、ここでは、抗がん剤や放射線治療との相乗効果が期待できて、副作用の低減にも効果を発揮する高圧酸素療法と深部加温療法について触れます。
 
1.高気圧酸素療法 
密閉された高圧タンク内で治療すると全身の血中酸素濃度が上昇し、体内の低酸素状態部分の改善によって腫瘍内の極端な低酸素状態を改善し、がん細胞内に蓄積している低酸素誘導因子やがん治療耐性化蛋白を減少させることで、抗がん剤や放射線、温熱療法の効果を高める作用があります。また、腫瘍細胞のミトコンドリアの活性化によるがん細胞の増殖抑制など、さらにがん患者さんのQOL改善などが期待できます。
 
2.深部温熱療法(ハイパーサーミア)
がん細胞は正常細胞よりも熱に弱いことを利用してがん細胞を殺傷する抗がん治療ですが、他にも多様な効果があり、①抗がん剤の効果を増強、②低下した免疫力を回復、③抗がん剤や放射線治療によって生じた正常細胞の傷害を抑えて副作用を低減する効果があります。他にも重要な作用として、④腫瘍内への抗がん剤の取り込みを増加させます(図3)。

さいごに

抗がん治療に何らかの代替医療を組み合わせる治療は欧米ではかなり一般的治療になりつつあります。標準治療の効果を増強し、副作用を軽減し、さらにQOL向上に寄与するのであれば、当然な選択肢と言えます。特にオゾン療法は有効です。一般社団法人日本オゾン・水素療法協会では、整形オゾンなどの技術講習会を行っておりますので、お気軽にお問合わせください。
 

お問い合わせ先
一般社団法人 日本オゾン・水素療法協会事務局(赤坂AAクリニック内)
担当 船渡川
電話 03-3585-1211 

 

 

図1 ミトコンドリア活性検査


図2 整形オゾン:膝関節腔へのオゾンガス注入


図3 サーモトロン(山本ビニター)