活動レポート

総論 柳澤厚生点滴療法研究会会長に訊く

「高濃度ビタミンC点滴療法」
―ビタミンCは、がんを直接攻撃するとともに
免疫力も高める理想の“化学療法剤”

 本誌で何度か特集した〝高濃度ビタミンC点滴療法〟は、読者より毎回大きな反響をいただいています。今回もこの療法への読者の期待に応え新しい情報を提供するために、本療法に詳しい7名の医師に臨床報告などをいただきました。
 そこで、冒頭では点滴療法研究会会長であり、高濃度ビタミンC点滴療法の第一人者でもある柳澤厚生医師に総論的な部分を一般読者の目線からいろいろとお伺いしました。

高濃度ビタミンC点滴療法はオーソモレキュラー療法の1つ

――柳澤先生は、2012年春に国際オーソモレキュラー医学会(本部:カナダ・トロント)会長にご就任され、この分野で名実ともに指導的なお立場になられました。また、わが国では点滴療法研究会会長として、高濃度ビタミンC点滴療法(以下、IVC)を広めてこられました。
 本誌には、「患者と医師のためのオーソモレキュラー医学情報」を毎月ご寄稿いただいており、がん患者さんはじめ他の先生方へも興味深い情報をご提供いただいております。
 そこでまず、オーソモレキュラー医学と今回の特集IVCとの位置づけについてお聞かせください。

柳澤 オーソモレキュラー医学を提唱したライナス・ポーリング博士(1901~1994)は、ノーベル賞を2回受賞した数少ない偉大な科学者ですが、IVCががんに効くと主張されたのもポーリング博士です。
 オーソモレキュラーとは分子栄養とか分子整合という意味ですが、適切な種類と量の栄養素(栄養素も分子である)を与えることによって薬理作用を期待して、病気の治療と予防を行っていこうというものです。ですから、IVCはがんという病気に対して、適切な種類の栄養素であるビタミンCを適切な量だけがん患者さんに投与することによって薬理作用を期待し治療しようというものですので、IVCはオーソモレキュラー療法の1つです。

――本題とは外れるかもしれませんが、他に似たようなものでどのような治療法がありますか。

柳澤 パーキンソン病に有効なグルタチオン点滴療法や、糖尿病性神経障害やがんに有効なαリポ酸点滴療法があります。また、ポーリング博士は合成アミノ酸を使うキレーション療法もオーソモレキュラー療法だと言っています。キレーションは動脈硬化や有害金属を除去するのに有効です。

ビタミンは、体内で起こるさまざまな化学反応を助け、生命活動の維持に必要不可欠な栄養素

――点滴療法の元祖はオーソモレキュラー医学会ということになりますね。
 ところで、私たちは安易にビタミンという言葉を使っていますが、いざ説明を求められた際には「体に必要な栄養素の1つ」とか、「野菜に含まれている」などという大まかなことしか言えません。そこで、〝ビタミン〟について簡単に説明してください。

柳澤 ビタミンとは生物の生存に必要な栄養素の1つです。体の中で起こるさまざまな化学反応を助け、生命活動の維持に必要不可欠な栄養素です。

――ということは、当然に欠乏すれば病気になってしまうということですね。
柳澤 そのとおりです。昔は太平洋などの外洋を航海すると野菜不足になってしまい、船員が脚気、壊血病、くる病、悪性貧血などを起こしていました。今でも、口内炎や皮膚炎を起こす原因として大きなものはビタミンB3の欠乏です。
――ビタミンには、ABCDとたくさんの種類がありますが、この違いは何ですか。

柳澤 簡単に説明しますと、発見順でA→B→C→Dと名付けられたのです。
 ビタミンの違いで重要なことは、「水溶性」と「脂溶性」の2種類があるということです。文字どおり、そのビタミンが水に溶けるか、脂に溶けるかということなのですが、脂溶性のビタミンA・D・E・Kは摂りすぎに注意しなければなりません。体内に摂り込まれると、なかなか出ていかないのです。しかし、それ以外のビタミンは水溶性ですから、多少摂りすぎても出ていきます。

がんの患者さんになぜ、ビタミンCを大量投与するのか

――その数多くある種類のビタミンのなかで、がん患者さんに点滴するのはなぜビタミンCで、しかも大量なのでしょうか。

柳澤 ビタミンCはブドウ糖と化学式がよく似ていて、ほとんどの動物が体内でブドウ糖からビタミンCを合成していますが、ヒトやサル、モルモット、コウモリだけは合成に必要な酵素が遺伝的に抜けているのです。ですから、必要なものがつくれないので、通常は口から摂るしかないのですが、がん患者さんには先ほど申し上げたとおり薬理作用を期待して点滴で大量に投与します。

――ヒトは他の動物と違い、体内でビタミンCが合成できないとはヒトの進化から考えると意外ですね。それで、1日のビタミンCの必要量(60~100㎎)は、食物から摂取する必要があるということですか。

柳澤 そのとおりですが、他の動物はビタミンCをもっとたくさん体内でつくっていて、人間の体重に換算すると、犬は200㎎、豚は500㎎つくっています。じゃあ、同じく体内でつくれない猿はというと7000㎎を口から摂取しています。
 また、ビタミンCは病気になると、さらに必要になります。ヤギは口からも多少の摂取はありますが、1万4000㎎のビタミンCを体内でつくっています。ところが、病気になると10万㎎ものビタミンCが体内でつくられます。

――ヒトの100㎎に対して、同じ霊長類の猿が7000㎎、ヤギが病気になったときは10万㎎とは驚きましたが、ポイントはもともとビタミンCはもっと必要で、病気になった際には、さらにたくさんのビタミンCを必要とするということですね。ですからIVCはがんに対して効果を発揮するのですね。

免疫システムを刺激し免疫力を高め、副作用のない〝抗がん剤〟と評価

柳澤 IVCを投与するとがん細胞の周囲で過酸化水素(活性酸素の一種)を生成し、がん細胞だけを攻撃します。一方、正常細胞はカタラーゼという酵素が中和するので、影響を受けません。また、ビタミンCは免疫システムを刺激するので、免疫力も高めます。さらにがん治療につきものの副作用は、まずありません。ビタミンCはがんを直接攻撃するとともに免疫力も高めるという、理想の化学療法剤といえます。
 IVCは、他の治療法がないと言われた場合は単独でも有効ですが、抗がん剤、放射線との併用でも効果を発揮します。また、手術の術前術後の免疫力の維持にも効果的です。
 しかし、点滴を1度や2度行っただけでがんが治るというものでなく、医師の指示どおりに点滴を受けたとしても、すべてのがん患者さんが治癒するものではありません。

――IVCですべてのがん患者さんが治るなら、がんは〝難病〟ではなくなります。しかし、現在の有効といわれる抗がん剤治療や放射線治療につきものの副作用が、ほとんど見られないというのはありがたいですね。

柳澤 欧米の統合医療では、高濃度ビタミンC点滴療法は非常にオーソドックスになっていて、副作用のない〝抗がん剤〟との評価が高いです。ただ医師の中でも、特に標準治療の医師の中には認めていない医師もいらっしゃいます。

安価な費用で、がん予防だけでなくアンチエイジングにも効果を発揮

――今までお話を伺っていてとても良い治療だと思いますが、費用はおいくらなのでしょうか。治療頻度と費用について教えてください。

柳澤 IVCは最初に15g、次は25g、50gと投与量を増やしていき、ビタミンCの血中濃度が350~400㎎/㎗になるようなビタミンC量を投与します。この濃度ががんに有効な血中濃度なのです。個人差がありますが、50~100gでこの血中濃度に達します。
 頻度としては、治療を始めたときは週に2~3回の点滴を、進行が早い人は3回以上がよいと思います。翌月くらいからは少し頻度を落とし、週1~2回となります。ただし、毎日行っても安全で、カナダの医師グループはすい臓がんの患者さんに週5回投与したという報告もあります。
 費用は、自由診療ですので各クリニックまちまちで、投与量によっても異なりますが、目安としては50gの場合は1回2万円前後となります。

――以前、本誌で取材したある先生は、がんになったら同じ思いを家族に味あわせないために「家族にがん予防のIVCを勧めたほうがよい」とおっしゃっていましたが、予防目的の場合にはどうしたらよいですか。

柳澤 その先生のおっしゃられていることは、よく理解できます。
 実は私も予防のためにIVC25gを月に2回行っています。これは、がん予防だけでなく、アンチエイジングの意味もあります。

――点滴以外で効率的にビタミンCを摂る方法はありますか。がん治療でIVCを受けた場合、点滴日の合間などに簡単に摂取できると、素人考えですが効果が高まる気がするのですが。

柳澤 経口摂取できます。しかし、ビタミンCは水溶性ですから水に溶けてしまいます。ですから、市販のビタミンCでは大量に摂ってもそのほとんどが尿に流れ出てしまいます。吸収量は10g摂って1g程度です。
 ところが、米国でこの吸収率の問題を解決するナノテク技術を活用したリポゾマール・ビタミンCという製品が開発されました。こちらの吸収率は良いですから、吉田さんが言われたように、点滴日の合間のビタミンC補充に最適です。

ビタミンC点滴療法を受ける前に「G6PD」の検査を

――ここで、禁忌の「G6PD欠損症」についてお伺いします。

柳澤 G6PD欠損症とは遺伝性疾患で、赤血球を正常に機能させる酵素が欠けています。日本人では0・5%と言われていますが、注意しなければなりません。IVCを行う前には、必ずこの検査を受けてください。
 さらに、禁忌という意味では腎不全・心不全の方は慎重に投与しなければなりませんので、医師とよく相談してください。

ビタミンC製剤輸入時の温度管理も大切

――もしこれを読んでIVCを受けようとしたときに、G6PD欠損症検査を行わない医師でしたら、他のクリニックに行かれたほうがよいですね。点滴療法研究会に所属されているお医者さんはそのようなことはないと思いますが。
 それと、以前本誌ではビタミンCの製剤会社に関する取材をしましたが、流通時の温度管理も大切とのことですね。 

柳澤 そのとおりです。USP基準と言って米国薬局方が定めた基準があるのですが、これによれば医療機関に納められるまで2~8℃の冷蔵保管が義務付けられています。凍らせてしまってもだめで、1度凍ってしまったものは廃棄しなければなりません。
 点滴療法研究会としては、当然ながらこの基準を順守すべく冷蔵コンテナで輸入したビタミンCを使用しています。輸入代行業者の中には、この基準を完全に守れていないところもあるので、注意しなければなりません。

国内外で進む臨床研究

――同じ費用を払っていて、温度管理があいまいな製剤を点滴されるのは嫌ですから、点滴を受ける際にはその点も注意しなければなりませんね。
 ところで、最近は国内外の研究も進んでいるようで、東海大学が米国の科学雑誌『PLOS ONE』に、IVCがヒト白血病細胞の血管新生を抑制するメカニズムについて発表されましたが。

 2005年 卵巣がん (米国・カンザス大学がんセンター)
 2006年 末期固形がん (Cancer Treatment in  America)
 2008年 悪性リンパ腫

(米国・ジェファーソン大学)

 2008年 悪性リンパ腫 (日本・東海大学医学部)
 2008年 IVCの安全性試験 (カナダ・マギル大学)
 2009年 膵臓がん (米国・ジェファーソン大学)
 2009年 膵臓がん (米国・アイオワ大学)
 2010年 抗がん剤の効果が低いがん (マギル大学)
 2010年 前立腺がん (デンマーク・コペンハーゲン大学)
 2010年 がん患者のQOL (日本・点滴療法研究会)
 2011年 膵臓がん (米国・カンザス大学)
 2011年 大腸がん (米国・ジェファーソン大学)
 2012年 膵臓がん (米国・Eastem Regional Medical Center)
 2012年 肝臓がん (米国・ジェファーソン大学)
 2012年 脳腫瘍(神経膠腫) (米国・アイオワ大学)

柳澤 表1にありますとおり、国内外での研究が進んでいます。このなかで、カンザス大学での卵巣がんの報告では、副作用の訴えが5分の1になったと報告しています。ジェファーソン大学では、すい臓がん9例中7例が安定、2例が進行という報告が出ています。さらにもう一つ、アイオワ大学の報告では、抗がん剤との併用で8週間IVCを投与したところ平均で13±2カ月生存し、通常より生存期間が延びました。
 この結果により、試験は第Ⅱ相試験に進みますが、その結果が待たれます。

医師が、がんになったときに選ぶIVC

――本誌では「医師である私ががんになったら」を連載中ですが、この企画は点滴療法研究会が222人の医師・歯科医師に行った意識調査「医師が癌になった時に選ぶがん治療」にヒントをいただきました。この報告では、92%の医師が標準治療以外の治療を受けると回答し、79%と第1位に受ける治療がIVCでしたね。

柳澤 そのとおりです。
 また、2012年に「IVCががん患者のQOL(生活の質)に及ぼす前向き調査研究」では、145の施設に協力いただきましたが、
 「1.QOLスコアの尺度はIVC点滴後4週間で改善され、さらに感情・認識・社会機能、疲労・痛み・不眠・便秘・経済的影響のスコアも改善した。2.主治医はIVC後に60%の患者でQOLが改善したと評価、不変35%、悪化5%であった。3.IVCは安全かつ効果的にがん患者のQOLを改善する」
 などの結果を得られました。

避けたい壮絶ながんとの闘病

――IVCにつき、いろいろと知ることができました。私も経済的に可能な限り、IVCを受けたいと思います。
 まとめとして、IVCとがん治療についてお話しください。

柳澤 IVCは抗がん剤との併用でも効果があります。しかし、抗がん剤の副作用には気をつけなければいけません。がん治療のイメージとして「壮絶な闘病」がありますが、「壮絶」のほとんどは、抗がん剤の副作用ですから。
 また、早く保険適用になって欲しいですね。3大標準治療は重要ですが、その補助療法としてIVCは効果が高いので同時にやるべきです。
 さらに、食事療法で栄養に注意を払い、ストレスを持たないことなど、がんだけを診るのではなく、全人的に患者さんを診ていくことがとても重要です。

BACKNUMBER

1.psd総論 柳澤厚生点滴療法研究会会長に訊く 「高濃度ビタミンC点滴療法」

(2013年8月62号掲載)

柳澤 厚生 

国際オーソモレキュラー医学会会長
点滴療法研究会会長