祖父から聞いた話では私の先祖は13代前から医師だったそうです
——まず、先生のご経歴からお話しください。
土橋 日本医科大学を卒業し、初期研修として東京の虎の門病院で、後期研修として鹿児島大学医学部第3内科で勤務しました。その後、北里大学東洋医学総合研究所の特別研修医として漢方と鍼灸を学びました。そして都内の病院勤務を経て、2009年に土橋病院の院長となり現在に至っています。
——医療法人慈恵会は、土橋病院を中心にデイサービス施設やグループホーム、サービス付き高齢者住宅などを展開されていますが、最近、介護老人保健施設「城西ナーシングホーム」が増床されたそうですね。
土橋 お年寄りは、温もりのある家庭で生活することを望まれていますが、個々の事情で支障のある方も数多くいらっしゃいます。そこで、そのような方々のために介護老人保健施設を運営していますが、改装するとともに増床しました。入所者の心と身体のケアを心がけ、1日も早い家庭復帰を目指します。
——先生の家系は代々医師の家系で、島津家の御典医もなさっていたそうですね。
土橋 祖父から聞いた話では、私の先祖は13代前から医師だったそうです。また、母方祖父、曾祖父も医師でしたので親戚には医師が多く、私も流れに乗ったような感じで、医師になっていました。
NLPの〝ヘルス〟という健康に特化したコースを学び修了しました
——そのような環境に育まれると普通は保守的になってしまいそうですが、先生は高濃度ビタミンC点滴療法を早くから取り入れられたり、最近は心理療法の1つであるNLPも学ばれたりされていらっしゃいますね。
土橋 NLPを勉強し始めて5年ほど経っていますが、昨年(2018年)はその中でも〝ヘルス〟という健康に特化したコースを学び、修了しました。
このコースは、深層意識にアプローチしていく方法を学ぶのですが、講師のロバート・ディルツ氏は『ビリーフ』という著書の中で、母親が末期の乳がんであったこと、しかし、母がなりたかった女優の夢をかなえることで病状が好転していったこと、そして、その後も10年以上経っても元気でいることを述べていらっしゃいます。
——精神的な問題を改善できたとき、がんがよくなったという話は多くの医師からお聞きしています。
土橋 今までは、行わなければならないことに従って生きてきたのが、がんで余命について考えた際に、今までの価値観や信念が大転換し、真の生きる目的を考えることができるようになります。その結果として、必然的に行動パターンや環境も変わり、がんを克服できるようになります。
ですから、私もがん患者さんの初診の際には、患者さんのお話しの裏側もよく理解して「何を大切に思っていらっしゃるのか」を探り出して、患者さん自身に「気付いて」いただき、少しでもベターな心理状態に患者さんを導くようにしています。
患者さんにはリラックスしていただき瞑想・半覚醒の状態で受けていただきます
——医師とよく相談しながら自身で治療を選択するなど前向きな気持ちで治療を受けるのと、医師に言われたままの治療を受け身の姿勢で受けるのでは、治療成績に差が出ることは多くの医師よりお聞きしています。本誌でもメンタルケアは重要視していて特集も組んでいますが、先生はサイモントン療法も学ばれた上で今回さらにNLPのヘルスコースも修了されたとのことですので、今後に期待しています。
そこで、メンタルケアにプラスして治療を受ける治療はどのようなものがありますか。
土橋 漢方と温熱療法は、保険診療で受けられます。漢方は「心身一如」の考え方に基づいていますから、私の考え方に合致しています。西洋医学を学んだ身ですが、心と体は別ものであるという考え方はとりません。しかし、最近は西洋医学でも物質的な面だけではなく、精神的な面も含んだストレスなどが重視されるようになり、漢方の考え方に近くなっています。
ですから、当院では漢方で直接がんを治すのではなく、心の平穏と免疫力のアップを目指して間接的ながん治療を行っています。
温熱療法は、サーモトロンという大型の機器を使い、高周波エネルギーをがん組織に非侵襲であてて、がんが正常細胞より熱に弱いという性質を利用し、がん患部の温度を上昇させるものです。しかし、当院は心理療法を重視しているので、患者さんにはリラックスしていただき瞑想・半覚醒の状態で受けていただくようにしています。
——保険外診療ですと、高濃度ビタミンC点滴療法とオゾン療法、プラセンタ療法を取り入れていらっしゃいますね。
土橋 高濃度ビタミンC点滴療法は、点滴によりビタミンCの血中濃度を350〜400 ㎎/㎗にすることを目標に、ビタミンCを50〜75g程度投与します。すると、がん細胞の周囲で過酸化水素を生成し、がん細胞だけを攻撃します。ところが、正常細胞はカタラーゼという酵素が中和するので影響を受けません。さらに、目立った副作用がなく、ビタミンCが免疫システムを刺激するので免疫力を高めるなどの効果も期待できます。
オゾン療法は、「血液クレンジング療法」、「血液バイタル療法」などとも呼ばれていて、ヨーロッパで盛んに行われている療法です。ボトルに採取した血液にオゾンを加えて反応させると、一瞬にどす黒かった血が鮮血に変わります。この抗酸化力が増した血液を点滴で体に戻す治療です。
がんに対する抵抗力を強化し、抗がん剤の副作用の軽減や治療効果の向上、患者さんのQOL(生活の質)の改善などが期待できます。
プラセンタ療法は、「プラセンタ」つまり胎盤から抽出した胎盤エキスが、アミノ酸に加えタンパク質、脂質、糖質などの3大栄養素のみならず、身体の働きを整えるビタミン・ミネラル・核酸・酵素といった生理活性成分、細胞の新陳代謝を促す成長因子などの栄養素を豊富に含んでいるので、これを注射・内服などで取り込む療法です。
「どんなに病状が重くとも治りうる、得たい結果が得られると信じてよいのだ。それが信念だ」
——どの療法も期待が持てますが、先生の心理療法を受けたうえであれば、さらに効果が期待できます。
最後に、がん患者さんにメッセージをお願いします。
土橋 NLPの講師のロバート・ディルツ氏は、「違いが違いを生むんだ。だから違いをつくりなさい」と話されていました。たとえば、自身の病気をがんと思うか健康問題と思うか、視点を変えることで結果は変わるのだというお話です。健康問題と視点を変えることで、主治医も「私の健康問題」という視点で向き合ってくれるようになり、そうしたら健康に良い情報が集まってきて、結果としてがん治療も良い方向に向かうのです。
がんはどこからやって来たのかと考えれば、それは患者さんの中にあったものです。それに気づき、がんからのメッセージを読み解き、より良い方向に変えることができた際には、「がんはありがたいもの」とおっしゃる患者さんが多いです。
がんとの関わり方をどう選択するのかは患者さん自身ですが、そこには治りうるという可能性が必ずあり、より良い人生を生きるために必要なものだったと考えられれば、がんも決して悪いものではないと思います。
尊敬するカール・サイモントン博士は、「どんなに病状が重くとも治りうる、得たい結果が得られると信じてよいのだ。それが信念だ」とおっしゃっています。
●医療法人慈恵会 土橋病院
〒890-0046 鹿児島県鹿児島市西田1-16-1
TEL:099-257-5711 http://www.tsuchihashi-hp.com/