シリーズ 医療の現場から
 
銘煌CITクリニック  藤田 成晴 院長に訊く
 
 

「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」は、
がん細胞だけが持つ抗原を樹状細胞に
取り込ませて免疫反応を誘導
〜保険診療で「もう治療法はありません」と言われたとしても、自由診療ならまだ可能性がある治療があります

 
 東京都港区にある「銘煌CITクリニック」は、地下鉄日比谷線の神谷町駅から徒歩3分で麻布台ヒルズのお隣にあり、がん特化型の先進クリニックとして、最新の免疫細胞療法である「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」などの、免疫学的アプローチを用いた治療を提供しています。また、画像検査では発見が困難な超早期のがんのリスクスクリーニング検査など、予防医療にも力を入れています。
 クリニックはとてもアットホームな雰囲気で、診察は一人ひとりに時間をかけた丁寧な診療を行うため完全予約制となっています。このような、患者さんの心に寄り添った医療を求めて、国内はもとより海外からも多くの患者さんが訪れています。
 そこで、今回は藤田院長よりお話を伺い、目指されている医療や行われているがん治療についてお訊きしました。

東京大学薬学部から大学院に進んだが医師を志して慶應義塾大学医学部に入学

——藤田院長のご経歴からお話しください。
藤田 東京大学薬学部を1992年に卒業し、同大学大学院薬学系研究科に進んで修士課程を修了しました。そこでは糖鎖の研究をしていたのですが、次第にがんと免疫について興味を抱くようになりました。また、患者さんと直接接することのできる医師のほうが向いているのではないかとも思うようになりました。そこで一からやり直す決意をして、1995年に慶應義塾大学医学部に入学しました。
 卒業後は、東京大学医科学研究所附属病院の内科で2年間の研修後、関東労災病院に移って内科を幅広く診ていました。2005年からは東京大学大学院博士課程に進み、理化学研究所の免疫・アレルギー科学総合研究センターで佐藤克明先生(現宮崎大学医学部教授)のご指導のもとで樹状細胞によるTリンパ球の制御に関する研究を行いました。さらに東京大学医科学研究所でWT1(ダブリュー・ティー・ワン)というがん抗原に特異的なTリンパ球の誘導に関する研究も行いました。
 このように臨床と研究を行っていましたが、セレンクリニック東京の副院長などを経て、2018年に「銘煌CITクリニック」を開業しました。開業することを決めたのは、東京大学医科学研究所から受け継がれた樹状細胞ワクチン療法をより多くのがん患者さんにご提供して、がん患者さんもスタッフもみんなが幸せになれるような場としてのクリニックをつくりたいと思ったからです。

がんの腫瘍マーカーより感度が高い早期発見に好適な検査

——東京大学の薬学部から大学院に進まれたのに、あらためて医師を目指されたことは先生の気持ちの強さを感じます。
 それではクリニックについて伺いますが、がんの早期発見検査、先進がん治療、アンチエイジングを3本の柱とされているそうですね。どれも大事なことだと思いますので、順にお話しいただけますか。
藤田 まずがんの早期発見検査ですが、当クリニックでは「サリバチェッカー」と「マイシグナル(マイクロRNA検査)」を取り入れています。
 サリバチェッカーは、だ液だけで簡単に行える検査です。体内で生成されるポリアミンという代謝物の種類別のパターンを分析し、AIを使って解析することでがんの種類別の罹患リスクがわかります。
 もう1つのマイシグナル(マイクロRNA検査)も、尿だけで簡単に行える検査です。マイクロRNAは細胞間のコミュニケーションも担っていることが明らかになってきた分子ですが、がん細胞は特有のマイクロRNAを分泌しており、この遺伝子配列のパターンを網羅的に解析することで、がんを早期に種類別にリスク判定することができます。がんの腫瘍マーカーより感度が高いと言われており、早期発見に好適な検査です。
——どちらも簡単な検査で感度も高いのであれば、ぜひ受けてみたいですね。2つの検査があるとのことですが、どちらが優れているのですか。
藤田 簡単なスクリーニングとしてはサリバチェッカーがお勧めですが、本格的に遺伝子配列のレベルまで調べるのであればマイシグナル(マイクロRNA検査)がよいと思います。ただし、費用が高いので、その点も考慮して選択していただいています。

ネオは「新しい」、アンチゲンは「抗原」正常な細胞には存在しない、〝がん細胞の目印〟

——自身の希望や目的をしっかりと先生にお話しして、自身に合った検査を受けていただきたいですね。次に、先進がん治療についてお話しください。
藤田 これまでの樹状細胞ワクチン療法は、がん種によって共通してみられるWT1とか、CEA、HER2、PSAなどの異常なタンパクに由来する「オンコアンチゲン(がん抗原)」と呼ばれるペプチド(アミノ酸が数個〜数十個つながった分子)を、免疫の司令塔である樹状細胞にまぶすように処理して患者さんに投与しました。そして、投与された樹状細胞がTリンパ球にがん抗原を教えて、Tリンパ球ががんを敵として攻撃する力を増強していました。
 しかし、私が開発に携わっている「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」はこれとは違い、患者さんの血中に流れているがん細胞(血中循環腫瘍細胞=CTC)を解析対象として、その遺伝子解析を行って患者さんのがん細胞だけにみられている特有の突然変異を見つけ出します。そして、その突然変異のある遺伝子がつくり出す異常なタンパク「ネオアンチゲン(ネオ抗原)」を同定し、そのペプチドをつくり樹状細胞にまぶすように処理して投与するものです。
 ネオアンチゲンの、ネオは「新しい」、アンチゲンは「抗原」という意味です。つまり、患者さんのがん細胞だけに特有のDNA変異によって新しく出現した異常な抗原のことで、正常な細胞には存在しない、〝がん細胞の目印〟になります。
——少し難しいですが、これまでの免疫療法は、がん種によって共通するオンコアンチゲン、つまり一般的ながん抗原を免疫の司令塔である樹状細胞に処理して、実行部隊であるTリンパ球に教えることによってがんを攻撃させていたのですね。
 一方、ネオアンチゲンは、その患者さんだけの特有のがん抗原を見つけだして、それを樹状細胞に処理して、実行部隊のTリンパ球に教えて攻撃させる治療法で、究極のオーダーメイド治療ということですね。
藤田 その通りです。これまでのオンコアンチゲンによる免疫細胞療法は、高い効果が得られた患者さんもいらっしゃいましたが、残念ながら十分な効果が得られなかった患者さんもいらっしゃいました。そこで、さらなるがん免疫治療の進歩が望まれていますが、それに応えようとネオアンチゲンによる免疫細胞療法の開発が進んでいます。私は2023年からこの療法のパイオニアである山下直秀東京大学名誉教授のご研究に参画させていただいています。
 ネオアンチゲンにも免疫細胞の標的になりやすいものとなりにくいものがあるのですが、ネオアンチゲン解析ではそれをコンピュータアルゴリズムによって計算します。そして、免疫細胞からの攻撃のされやすさを示す指標である免疫原性をスコア化し、それに基づいて最もTリンパ球の攻撃目標になりやすいネオアンチゲンを選択します。
 ただし、ネオアンチゲンによる治療はまだ発展途上で、いくつかの課題が残されています。がん種によって遺伝子の変異の速さが激しいものと比較的落ち着いているものがあって、遺伝子の変異が非常に速い場合は、せっかく同定したネオアンチゲンの効果が弱まってしまうということも考えられます。
 また、免疫細胞療法は自由診療のものが多く費用が高い治療ですが、ネオアンチゲンはそのなかでもさらに高額な治療であることが欠点になります。

アフェレーシスで循環させた大量の血液からがん細胞を採取する

——ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法は、こちらのクリニックのみで行われているのですか。
藤田 他にも行っているクリニックはありますが、当クリニックには他にはない特長があります。それは血中の循環腫瘍細胞を調べる際に、一般的には「リキッドバイオプシー」と言って、数十ミリリットルの血中を採取するだけですのでがん細胞がごくわずかしか見つかりません。しかし、当クリニックは山下名誉教授の特許技術を使わせていただいていますので、アフェレーシスと言って血液を体外に取り出して循環させて必要な成分だけを分離処理し、残りを体内に戻す装置を使って大量の血液のなかから循環腫瘍細胞を見つけています。アフェレーシスで循環する血液量は4リットルくらいになり、そのなかからは桁違いに多数の循環腫瘍細胞が見つかりますので、ネオアンチゲンの遺伝子解析の精度を非常に高くすることができます。
——究極のオーダーメイド免疫細胞療法である、ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法の発展を願っています。
 他に行われているがん治療もお話しください。
藤田 先ほどお話ししたオンコアンチゲンを利用したものも含め、いろいろな免疫細胞療法も取り入れています。また、「免疫チェックポイント阻害薬」による治療や、免疫細胞療法の効果を高めるための「水素吸入療法」もご用意しています。
 そのなかで、「活性化リンパ球療法」は、がんを攻撃するTリンパ球を培養して数を数百倍まで増やし、活性化させて体内に点滴で戻す治療法です。Tリンパ球は「獲得免疫系」と呼ばれ、樹状細胞からの指令に基づいてがん抗原を精密に識別してがん細胞を攻撃するので、樹状細胞ワクチン療法との相乗効果が期待できます。
 また「NK(ナチュラルキラー)細胞療法」はNK細胞をこちらも数百倍まで増やしてから体内に点滴で戻す治療です。NK細胞は「自然免疫系」と呼ばれ、樹状細胞からの指令がなくても単独で異常ながん細胞を見つけて攻撃します。
 この「NK細胞療法」は、クリニックの柱の1つであるアンチエイジングの効果も期待できます。NK細胞には加齢に伴って出現する老化細胞を殺傷してくれる働きもあるからです。
 「免疫チェックポイント阻害薬」は、オプジーボを低用量で使用して免疫細胞療法と併用する治療法です。オプジーボは間質性肺炎などの副作用(免疫関連有害事象)がみられることがありますが、低用量の場合はその可能性が低くなります。しかし、起こらないと断言はできませんので、主治医の先生と連携をとりながら慎重に進めています。
——今お話しいただいた免疫細胞療法も期待が持てますね。いろいろな種類がありますが、費用はネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法よりお安いとのことですので、それぞれの長所短所を見極めて選択して欲しいと思います。
 最後に、がん患者さんにメッセージをお願いします。
藤田 細胞を使った医療は細胞培養を患者さんごとに行うため、大量の臨床試験を行うことがとても困難です。そこでなかなか保険診療として認められません。それで保険診療のみがエビデンスのある優れた治療とみなされることがありますが、自由診療にも一定のエビデンスがある治療もあります。そして、保険診療のがん治療には副作用の強いものがありますが、自由診療では副作用の少ない治療も多いので、いろいろと調べていただきご自身が納得されたものを取り入れていただきたいと思います。
 当クリニックの患者さんで、標準治療だけでは達成できなかったような経過をたどられていらっしゃる方もおられます。保険診療で「もう治療法はありません」と言われたとしても、自由診療ならまだ可能性がある治療がありますので、どうかあきらめないでください。
 

●銘煌CITクリニック
東京都港区麻布台1-7-1 菅野ビル3F
TEL:03-6277-6871
https://meiko-cit-clinic.com/

 

−196°Cの液体窒素から細胞を取り出す藤田院長


アフェレーシスはゆったりと受けることができる


免疫療法に関わる白血球


免疫の司令塔ともいえる樹状細胞(藤田院長による光学顕微鏡写真)


アフェレーシスに使用する医療機器

藤田 成晴(ふじた・しげはる)
平成4年東京大学薬学部卒業、平成6年東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了。平成7年慶應義塾大学医学部入学、13年同大学卒業。平成13年から15年まで東京大学医科学研究所附属病院内科勤務。平成15年から17年まで労働者健康福祉機構関東労災病院内科勤務。平成17年東京大学大学院医学系研究会博士課程進学、21年同大学院博士課程修了。平成17年から法務省矯正局東京矯正管区内科矯正医官。平成23年から26年まで武蔵野大学薬学部薬物療法学教室非常勤講師。平成27年から29年まで医療法人社団医創会 セレンクリニック東京副院長。平成30年より銘煌CITクリニック院長