国際オーソモレキュラー医学会と傘下にある各国の学会では、新型コロナウイルス感染(以下「コロナ」と略)の予防・治療に、ビタミンCを始めとする栄養療法が有用であることを世界中に伝えてきました。東ヨーロッパに位置するアゼルバイジャン共和国では、PCR検査陽性の自宅待機コロナ患者には、無料で国際オーソモレキュラー医学会が推奨するビタミンC、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、セレンが郵送で送られています。また、アルジェリアでは国営放送でコロナ予防にビタミンCやDを推奨しています。
しかし、多くのエビデンスがありながら、アゼルバイジャンやアルジェリアのように国が自ら国民にビタミンC・Dなどによるコロナ予防を周知させているのは一部の国に限られています。現実は学会や栄養学者の強い働きかけにも関わらず、日本を始め多くの国々の政府や関係機関は無視したままであり、メディアも国民に向けて情報を配信しません。
■イギリスで請願署名活動「新型コロナにビタミンCを」が立ち上がる
イギリスでも政府や医療機関、メディアがコロナに対するビタミンCのエビデンスのある有効性を無視しています。そこで、イギリスの栄養療法の専門家らが集まり、2021年12月7日にイギリスを始めとする各国政府ならびに関係機関に請願する署名活動「新型コロナにビタミンCを(Vitamin C for COVID」が発足しました(写真1)。
この運動の創始者は、イギリスの著名な栄養学者であるパトリック・ホルフォード博士です(写真2)。
ホルフォード博士は1970年代に学生としてライナス・ポーリング博士の教えを受け、ポーリング博士が推奨するビタミンCやオーソモレキュラー医学の考えに強く影響を受けています。彼は、マルチビタミンが子供のIQを高めることを示す画期的な研究に深く関わりました。ホルフォード博士はこれまでに45冊の栄養療法とメンタルヘルスに関する著書があり、これらは日本を始め30カ国以上の言語に翻訳されています。ホルフォード博士は2013年に、オーソモレキュラー栄養療法を広く広めた功績により国際オーソモレキュラー医学会の『名誉の殿堂入り』を受賞しています。
■各国の学会や学者が活動を支援する
この組織の活動目的は「ビタミンCを始めとする防御免疫に関わる栄養素や食品の正しい情報により、コロナや他のウイルス感染から市民を守る」ことです。組織は非営利団体であり、ホルフォード博士の下にメディア、キャンペーン、財務、科学担当など5人のボランティアによって自主的に運営されています。この組織を支援するために、大学教授、科学者、医師、栄養士、そして医療関係者のグループが組織されています。
学術アドバイザーチームには、医学、薬理学、生化学、栄養学、免疫学、ウイルス学、公衆衛生、救急医学など、世界各国16人の専門家が選ばれ、私もチームメンバーの1人に選ばれました。そして、ニュージーランドのオタゴ大学助教授アニトラ・カー博士が投票で議長に選出されました。
また、この活動に賛同する各国の学会がどんどん加わり、現在32学会・組織が名乗りをあげています。私が会長をしている国際オーソモレキュラー医学会、日本オーソモレキュラー医学会、そして点滴療法研究会も支援組織として加わりました。
■請願書の全文
請願書の巻頭は次の文で始まっています。
「ビタミンCは、風邪の予防、急性期コロナ感染の罹病期間と重症度の軽減、さらには生命をも救う可能性のある、安全で安価で非常に効果的な抗ウイルス栄養素です。しかし、この事実を『偽の情報』として位置づけられ、政府の推奨もなく、医師によって処方されることはめったにありません。これを変えていかなければなりません。 私たちの請願書に署名をお願いします。」
請願書の全文は次の通りです。
私たちは、人々の生命を救う科学に基づく公衆衛生および医療政策の立場に立ち、次のことを請願します。
⑴政府とその公衆衛生および栄養機関は、この安価で安全な栄養素のエビデンスを徹底的に評価し、研究に資金を提供する。
⑵政府、厚生局、医師会は科学的証拠に基づいて、ウイルスの流行中にすべての市民にビタミンCを補給することを推奨する。
⑶「新型コロナとビタミンC」をデジタル、放送、出版メディア上で虚偽情報として分類操作しない。
⑷家庭医、病院医師、栄養士は、風邪の症状やコロナウイルスに感染している人に、症状の持続期間と重症度を減らすためのビタミンCの補給を積極的に奨励する。
⑸全てのコロナ患者はビタミンCの欠乏の有無を診断し、治療する。
⑹全てのコロナ患者は入院直後よりビタミンC投与を開始する。
⑺集中治療室のすべてのコロナ患者は標準的な補助治療としてビタミンC点滴を行う。
そして、最後にライナス・ポーリング博士のイラストと共に、Cold(風邪)とCovid(コロナ)を掛けて(写真3)の言葉がスローガンに掲げられています。
■おわりに
国際請願活動「新型コロナにビタミンCを」が正式開設した2020年12月9日の時点で、123人の医療関係者、4717人の一般市民が請願に署名をし、32の学会・組織が支援をしています。本誌が読者の目に触れることにはもっと多くの署名が集まることでしょう。読者諸氏もぜひ署名に加わっていただければ幸いです。
〈参考〉
国際請願活動「新型コロナにビタミンCを」のウエブサイト
https://www.vitaminc4covid.com
写真1 国際請願活動「新型コロナにビタミンCを」のロゴ
写真2「新型コロナにビタミンCを」活動の創始者 パトリック・ホルフォード博士
写真3 請願書に添えられたポーリング博士のイラストとスローガン。
「二度のノーベル賞を受賞したライナス・ポーリング博士は『風邪(Cold)にビタミンCを』と言った。今、私たちに必要なのは『コロナ(Covid)にビタミンCを』だ。」
柳澤厚生 (やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、杏林大学医学部内科助教授、 杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。2015年〜2017年に事業構想大学院大学研究所客員教授。
また、神奈川県鎌倉市にスピッククリニックを開設、現スピッククリニック名誉院長。点滴療法研究会会長。高濃度ビタミンC点滴療法をはじめとするさまざまな点滴療法を日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員 (FACC)、米国オゾン療法学会会員。2009年第10回国際統合医学会会頭。2012年より国際オーソモレキュラー医学会会長(カナダ)。2011年国際オーソモレキュラー医学会殿堂入り(カナダ)、2014年アントワーヌ・ベシャン賞(フランス)、パールメーカー賞(アメリカ)、世界神経療法会議最優秀アカデミー会員(エクアドル)を授与される。2018 年に東京で開催された国際オーソモレキュラー医学会第 47 回世界大会会長。著書 に『ビタミンCがガン細胞を殺す』(角川 SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川 SSC)、『グルタチオン点滴でパーキンソン病を治す』(GB)、『つらくないがん治療:高濃度ビタミンC点滴療法』(GB)、『点滴でアンチエイジング』(主婦の友)などがある。