連載 第97回 患者と医師のためのオーソモレキュラー医学情報

新型コロナウイルス感染による肺炎:
オーソモレキュラー栄養療法による予防と治療(3)

 
柳澤 厚生
国際オーソモレキュラー医学会 会長 点滴療法研究会 会長
スピッククリニック 名誉院長

 新型コロナウイルス感染(COVID-19)はさらに世界中に拡大、世界保健機関(WHO)の公式発表によれば4月5日時点の感染者数はこの1カ月で10倍の113万3681人、死者は20倍の6万2784人と急増しました。日本でも感染者数が2935人、死亡者は69人と急増しています。東京も連日100人を超える新規患者が発生し、陽性者891人、死亡者は23人となっています。臨床現場では医療破綻寸前となり、政府の緊急事態宣言まで間近の状態です。

■日本オーソモレキュラー医学会の活動

 国際オーソモレキュラー医学会は栄養医学の専門家の立場から、新型コロナウイルスの感染予防と重症化を防ぐための栄養素の種類と推奨量を提言(ビタミンC1日3g以上、ビタミンD3を1日2000IU、亜鉛1日20、セレン1日100㎍、マグネシウム1日400)、さらに、入院した場合の高濃度ビタミンC点滴療法12・5g〜25gを推奨しました。日本オーソモレキュラー医学会ではこれをホームページで公開、さらに3月3日に記者会見を行いました(詳細は本誌4月号を参照)。この模様は本誌、Yahooニュース、メディカルトリビューン紙、日経Woman Terraceなどに掲載、さらに国際オーソモレキュラー医学会ウエブサイトより世界に配信されました。

■新型コロナウイルスに対するオーソモレキュラー療法の広がり

 3月20日の英国の有名医学誌ランセットのオンライン版に、「新型コロナウイルスによる急性呼吸不全症候群(ARDS)患者を救命するために高濃度ビタミンC点滴も考慮する」という論文が出ました。少しずつですがビタミンCに対する風向きが変わっています。
 3月22日に米国疾病予防管理センター(CDC)の前所長トム・フリーデン氏は、大手メディアのフォックスニュースとのインタビューで、「ビタミンDがコロナウイルスの感染リスクを減らすかもしれない」と語りました(写真1)。国際オーソモレキュラー医学会がコロナウイルス感染予防に推奨するサプリメントにビタミンDを組み込んでいますが、感染症の専門家がこれを裏付けることになったのです。
 3月25日には、やはり米国大手メディアのCNNが、新型コロナウイルス感染についてアメリカ国立栄養研究所感染症部門の責任者アンソニー・ファウチ博士とのインタビューを放映しました(写真2)。その中でファウチ博士は、「ビタミンCは一定の感染症に良いことはすでにわかっている。さらに、ビタミンDの効果を早急に臨床試験で明らかにすべきだ」と話しています。
 このように専門家が、ビタミンCやDについて自由に発言ができるアメリカのカルチャーを私はうらやましく思えました。

■ニューヨークの病院が重症患者に高濃度ビタミンC点滴を導入

 同日のニューヨークポスト紙に、素晴らしいニュースが掲載されました。ニューヨーク州最大のノースウエル・ヘルス病院グループの1つであるロングアイランド地区の病院で、新型コロナウイルス感染で入院する重症患者に直ちに大量のビタミンC点滴をしているというのです。救急治療担当のアンドリュー・ウエーバー医師は、
 「中国の上海でビタミンC大量投与をしたコロナウイルス感染患者の回復が明らかに良いことから導入に踏み切った」と語っています(写真3)。
 ビタミンCの投与量は中国で行われている臨床試験の半分の量ですが、大きな前進です。この報道は、米国中の大手メディアにも取り上げられました。4月4日に友人で米国カンザス大学のチェン博士から情報が入りました。すでに、ニューヨークでは24の病院で高濃度ビタミンC点滴が導入され、さらにカリフォルニア州公衆衛生局では高濃度ビタミンC点滴を治療の選択肢に加えることを検討しているというのです。さらに、イタリアのシチリア州パレルモ大学医学部付属病院では、ビタミンC点滴を新型コロナウイルス肺炎患者500人に投与する臨床試験が発表されました。この1カ月は本当に大きな変化でした。

■世界保健機関(WHO)の声明

 3月20日に世界保健機関(WHO)本部(ジュネーブ)で、テドロス事務局長が行った定例のメディアブリーフィングの中で、新型コロナウイルス感染のパンデミックを乗り越える5つのポイントとして、「食事、運動、禁煙、禁酒、そしてストレスを減らす」ことを提唱しました。オーソモレキュラー医学にも通じる彼の声明は、次のような感動する内容でした(写真4)。
 「ある日突然、多くの人の生活が劇的に変わりました。私の家族も同じです。娘はオンライン授業を受けています。なぜなら学校が閉鎖されているからです。感染が広まっていない国々は、深刻な状況だとしても危機を回避できます。このウイルスに打ち勝った都市や国の経験は他の国々に希望と勇気を与えます。
 この困難な時期に重要なのは、心身の健康管理を続けることです。心身の健康管理は長期的なメリットだけではありません。あなたがCOVID-19と闘うときに必ず助けになります。
1.健康で栄養価の高い食事を摂ることは免疫システムが適切に機能するのを助けます。
2.アルコール量を飲みすぎないようにし、甘い飲料を避けるようにしてください。
3.禁煙してください。 喫煙は、COVID-19に感染した場合に重症化リスクを高める場合があります。
4.運動してください。WHOは、成人の場合は1日30分、子供の場合は1日1時間の身体活動を推奨しています。国や自治体が許可している場合には外でウォーキング・ランニング・サイクリングなどをして、他の人との距離に注意しながら運動しましょう。外出禁止の場合には、エクササイズ動画を使ったり、ダンスを踊ったり、ヨガをしたり、階段の上り下りで運動をしてください。
在宅勤務をしている場合には、同じ姿勢で長時間仕事をしないようにしてください。30分ごとにイスから立って3分間の休憩をとってください。
5.心のケアをしてください。危機的状況でストレスを感じ、混乱し、恐怖に陥るのは普通のことです。信頼できる知人との会話やコミュニティの人からのサポートはあなたの助けになります。
 隣人・家族・友人を気にかけましょう。思いやりは薬です。不安を感じるならば音楽を聴き、本を読み、ゲームをして、ニュースをあまり見ないようにしましょう。信頼できる情報を1日1〜2回入手するにとどめましょう。」

■おわりに

 日本はここで正念場を迎えました。外出を控え、人との密な接触を避け、十分な栄養をとりましょう。WHOのテドロス事務局長が最後にこう締めくくりました。
 「新型コロナウイルスは、私達から多くのものを奪っていますが、同時に特別なものを与えてくれました。それは、人類として1つになる機会、一緒に働き、一緒に学び、一緒に成長する機会です」
 さあ、もうひとがんばりです。
 
参考ウエブサイト
⑴国際オーソモレキュラー医学会ウエブサイト https://isom.ca
⑵報道関係者向け記者会見の動画 https://vimeo.com/395176471
⑶Lancet誌に掲載されたCovid-19の治療
Matthay M, et al.: Treatment for severe acute respiratory distress syndrome from COVID-19
www.thelancet.com/respiratory Published online March 20, 2020
https://doi.org/10.1016/S2213-2600(20)30127-2
⑷イタリアで行われているビタミンC点滴による新型コロナウイルス感染治療の臨床試験
https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04323514
⑸世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長の声明

写真1 米国疾病予防管理センターの前所長トム・フリーデン氏


写真2 米国立栄養研究所感染症部門のアンソニー・ファウチ博士


写真3 ノースウエル・ヘルス病院のアンドリュー・ウエーバー医師


写真4 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長

柳澤厚生 (やなぎさわ あつお)
杏林大学医学部卒、同大学大学院修了。 医学博士。米国ジェファーソン医科大学リサーチフェロー、杏林大学医学部内科助教授、 杏林大学保健学部救急救命学科教授を経て、2008年より国際統合医療教育センター所長。2015年〜2017年に事業構想大学院大学研究所客員教授。
また、神奈川県鎌倉市にスピッククリニックを開設、現スピッククリニック名誉院長。点滴療法研究会会長。高濃度ビタミンC点滴療法をはじめとするさまざまな点滴療法を日本に導入。米国先端治療会議認定キレーション療法専門医(CCT)、アメリカ心臓病学会特別正会員 (FACC)、米国オゾン療法学会会員。2009年第10回国際統合医学会会頭。2012年より国際オーソモレキュラー医学会会長(カナダ)。2011年国際オーソモレキュラー医学会殿堂入り(カナダ)、2014年アントワーヌ・ベシャン賞(フランス)、パールメーカー賞(アメリカ)、世界神経療法会議最優秀アカデミー会員(エクアドル)を授与される。2018 年に東京で開催された国際オーソモレキュラー医学会第 47 回世界大会会長。著書 に『ビタミンCがガン細胞を殺す』(角川 SSC)、『超高濃度ビタミンC点滴療法ハンドブック』(角川 SSC)、『グルタチオン点滴でパーキンソン病を治す』(GB)、『つらくないがん治療:高濃度ビタミンC点滴療法』(GB)、『点滴でアンチエイジング』(主婦の友)などがある。